広瀬 翔
合成桁の強度評価法の違いが桁断面寸法に与える影響
長井正嗣,岩崎英治
近年、橋梁建設コストの縮減が強く求められるようになり、各機関で積極的な対応が始まった。とくに、日本道路公団では、桁橋を対象に、これまでの形態(薄肉多主桁で比較的厚い床版を支持する)を大きく変化させた極めてシンプルな少数主桁橋の開発を行うとともに、耐久性の高いPCまたは合成床版を採用し、床版との合成効果を期待した連続合成桁を復活させた。このような対応によって、制作費ベースで、従来形態に比べて約10%のコストダウンが達成された。このように、構造形態を改革し、コストダウンを達成できる合成少数主桁橋が一般化された状況の中で、更なるコスト縮減が求められるようになっている。少数主桁橋は極めてシンプルであるため、更なるコストダウン対策が見えない閉塞感が漂うようになった。この打開策として、極めてシンプルな形態を持つ合成少数主桁橋に、新しい設計の概念を導入し、更なるコストダウンを達成しようというものである。つまり、この具体的内容は、合成構造ゆえに、コンクリート床版が鋼に与える(座屈)拘束効果を期待し、かつ塑性域での設計を行うものである。更に具体的に言えば、
1)これまでのノンコンパクト断面設計(最大強度が降伏モーメントまたは座屈モーメント)からコンパクト断面設計( 全塑性モーメント)への移行。
2)コンパクト断面は、厚肉のイメージがつきまとうが、コンクリート床版の拘束効果を期待し、薄肉断面でコンパクト化、全塑性化を達成する。
本研究では、3径間連続桁のスパン80,100,120mを対象として、コンパクト断面設計とノンコンパクト断面設計を行い、得られる鋼重量を比較し、コンパクト断面設計のコストダウンに対する効果を検討する。また、検討断面を4断面、下床版の有無をパラメータとして計算を行った。本研究により得られた知見を以下に示す.
1)ノンコンパクト断面設計からコンパクト断面設計へ移行することで、20〜30%の強度増加が得られ、断面寸法の小型化が実現できるとともに、死荷重の大きい橋梁では、部分安全係数法との併用によって、より一層の効果が得られる。
2)コンパクト断面設計とすることで、重量を全断面において削減でき、最大で35%もの削減効果が得られた。
3)コンパクト断面設計とすることで、桁断面寸法をコンパクトにすることが可能となり、20%程度の鋼重低減も期待できる。