伊藤 広光
新潟県内の耐候性橋梁の外観評価と腐食傾向の分析
岩崎 英治,長井 正嗣
鋼橋建設においては,LCC を押し上げる最大の原因となる塗装費用の縮減を可能にする無塗装耐候性鋼材の採用が近年多くなっている.
しかしながら,無塗装耐候性橋梁の採用にあたっては飛来塩分量が0.05mdd以下の環境にあること.また,全国の海岸線を5つの地域に分け,それぞれの地域で飛来塩分量調査を行わなくてもよい離岸距離が示されている.
新潟県が含まれる地域では,この離岸距離の基準がそのほかの地域に比べて最も厳しく,無塗装耐候性橋梁にとって非常に厳しい環境であることが伺える一方で,地域によってはこの離岸距離の基準を緩和できる可能性も考えられる.
そこで,本研究では無塗装耐候性橋梁の適用範囲緩和の可能性を探ることを目的とし,新潟県内の無塗装耐候性橋梁を調査し,目視による外観評価を行った.また,その結果から,腐食傾向を分析し考察を行った.
本研究により得られた知見を以下に示す.
1)離岸距離が10km から20km の範囲にある橋梁では,無塗装耐候性橋梁を採用できる可能性が高く,下フランジ上面および下フランジ下面に錆安定化補助処理を施すことでさらなるパフォーマンスの向上が期待できる.
2)離岸距離が20km 以内の橋梁では,最上流面および最下流面に比べて,内側の面で評価レベルが低下する傾向にあるが,離岸距離が20km 以上の橋梁では,桁のどの面においても評価レベルに大きな違いはない.
3)各面において下フランジ上面および下フランジ下面は,そのほかの部位に比べて評価レベルが低下しやすい部位である.
4)無塗装耐候性橋梁においては,桁端部防食塗装や排水対策を入念に行うことでパフォーマンスの向上が期待できる.
5)評価レベルのみからは今後の錆の進行を予測することが困難であり,外観評価をする際には,定量的に錆を評価できる方法も行う必要がある.