堀江崇之
斜張橋における桁,ケーブルの相対剛比に応じたケーブル最適安全率に関する研究
長井正嗣,岩崎英治
我が国におけるケーブル系長大橋の建設は,現在でも幾つかの施工例が見られるものの,1990年代の本四架橋に代表されるような1000m前後の長大橋を建設した全盛時代からは明らかに少なくなっている.現在では,韓国や中国での長大橋建設が盛んで,特に中国では,スパン1000mを超える世界最長の斜張橋2橋の建設が始まっている.また,韓国でもスパン800mクラスの斜張橋の建設が始まろうとしている.
さて,我が国のPC橋梁に目を向けるとスパン100〜150m領域における経済的形式として,これまでの斜張橋と比較して塔高を低くした吊形式橋梁、エクストラドーズド橋が数多く建設されている.この場合のケーブル安全率は,活荷重を主に桁で受け持つとした設計思想のもと、疲労の問題が少ないとの立場から、床版プレストレス用のPC鋼棒と同様に破断に対して1.7を採用している.これまで我が国の斜張橋の設計では安全率として2.5が採用されてきており,大きな違いが見られる.疲労の観点から安全率を低減できるとしているが,その根拠は明確でなく,また終局強度特性に関してもその影響は明確ではない.
そこで,本研究では,スパン150mのエクストラドーズドタイプ合成2主I桁を対象に.腹桁高(1,2,3,5mの4ケース)とケーブル安全率(破断に対して1.7,2.0,2.2,2.5,3.0の5ケース)をパラメータとした終局強度解析を行い,桁,ケーブルの相対剛比とケーブル安全率を関連付けて、ケーブル安全率の設定に関する検討を行うこととした.本研究で得られた結果を要約すると以下のようになる.
1)斜張橋の終局(崩壊)状態における作用荷重倍率(強度)が同一となるケーブル安全率を主桁高に応じて明らかにした。これより、桁高を低くするにつれてケーブル安全率を大きくする必要がある。
2)今回のモデルを対象に、同一強度を得るための主桁鋼重量とケーブル重量の計算を行った。なお,桁とケーブルの単価・施工費が異なることから、ケーブル重量については2,3倍した値を用いている。これより、桁とケーブルの剛比を大きくすることは不経済となること明らかにした。