藤本 昌樹

斜角を有する合成桁の力学特性の解明に関する研究

長井 正嗣,岩崎 英治

近年,公共事業における建設コスト縮減要請を受けて,各機関での対応が活発に行われている状況にある.橋梁においても,主に日本道路公団を中心として,従来の橋構造を大幅にシンプル化した新しい構造の採用,また鋼とコンクリートのそれぞれの特長を生かした複合(合成,混合)構造の採用が活発となり,コスト縮減が計られている.さて,鋼系橋梁に目を向けると,経済的形式として合成2主I桁橋が提案され,スパン30〜60mの範囲で,コンクリート橋に対して競争的なタイプと位置付けられている.しかしながら,スパンが30m以下,または60〜70m以上となると,コンクリート(PC)橋梁が経済的と評価されている.このような状況の中,スパン30m以下の競争的鋼系橋梁として,補剛材を一切取り付けない形鋼と合成床版からなるシンプル化構造に着目し,その力学的特性について検討を行った.この提案構造は,道路橋示方書で設置が義務付けられている主桁間を連結する中間横桁も省略したシンプルな構造である.そのため,本形式の力学特性を検討し,床版の設計モーメント評価に注意を払う点を除いて力学的問題が小さいことを明らかにした.
本研究では,この橋構造を斜角桁に適用可能であるかを同定するために,同様の力学特性に関する検討を行った結果を報告する.スパン15,25mモデルを対象に,直橋を含め斜角60°,70°,80°及び中間横桁の有無をパラメータとした解析を行った.本研究で得られた結果を要約すると以下のようになる.
1)T荷重が作用する場合,直橋と共に斜角桁の主鉄筋方向曲げモーメントは中間横桁の有無の影響を受けない.一方,斜角が90°〜60°と厳しくなるにつれて曲げモーメントは増加し,斜角60°の場合は,直橋に対して5%増加する.
2)T荷重の作用により,多主桁間の相対変位が生じて主筋曲げモーメントは,桁位置をスパン方向全長に鉛直支持して求められたモーメントに比べて増加する.道路橋指示方書の設計式に対して20%強大きい値が得られ,設計上注意する必要がある.
3)L荷重を載荷した場合の床版モーメントは,中間横桁の有無の影響を大きく受ける.また,斜角の変化によるモーメントの変化率もT荷重の場合に比べて大きくなる.しかし,絶対最大値は道路橋指示方書の設計式で得られる値以下であった.
4)斜角の影響による床版曲げモーメントの変化率を,T荷重,L荷重に対して与えた.