斉藤 慎吾

耐候性鋼橋の腐食評価の定量化に関する研究

岩崎 英治 長井 正嗣

耐候性鋼材は安定化さび層の形成により無塗装で使用することができる.そのため,塗装による維持管理コストの低減を期待することができ,耐候性鋼材を使用した無塗装耐候性鋼橋梁の採用が増加している.耐候性鋼橋は安定化さび層の形成により鋼材の腐食の進行を抑制させるものであるため,腐食が完全に止まるわけではない.
安定化さび層の形成は環境に左右されるため,建設後もさび状態の調査,評価を行い,適切に維持管理していく必要がある.耐候性鋼橋のさび状態の評価方法の代表的なものにさび外観評価法がある.これは,さび粒子の大きさ,さびの色調を目視により評価する方法で,実用的で簡便であることから,現在一般的に用いられている.しかし,目視でさびの状態を評価するため,客観的に判断することは経験を積んだ技術者でなければ容易ではなく,判断が評価者の主観により左右されてしまう問題点がある.
本研究ではさび外観評価法の客観性の向上を目指し,新潟県内の既設耐候性鋼橋の現地調査により,さび外観評価基準の評価因子の定量化を行い,腐食環境や腐食状態との関係を調べ,客観的な外観評価レベル推定手法を提案することで,維持管理の一助としたい.
以下に得られた結果を述べる.
1)3年間の継続的な付着塩分量調査より,時間経過による付着塩分の累積は見られない.また,桁外面や内桁上部は,雨水や結露による洗い流しの影響を受けるため付着塩分量は少ない.
2)測色調査より,表面処理仕様,裸使用橋梁ともに局部的に腐食環境の厳しい箇所で彩度,色相角度が大きくなる傾向が確認できた.
3)セロテープ試験により,さび外観評価基準である個々の評価因子と外観評価レベルとの間には強い相関は認められなかった.
4)定量化したさび外観評価基準の評価因子を入力パラメータとした階層型ニューラルネットワークを用いた外観評価レベルの推定手法を提案することができた.
5)今後の課題として,推定に用いた調査データが少ないため,さらに調査データ数を増やし,信頼性を確認する必要がある.