北川 将士
合成桁の終局曲げ強度特性の解明に関する研究
長井 正嗣,岩崎 英治
近年,橋梁建設コスト縮減が強く求められており,各機関あげて対応に取り組んでいる状況にある.鋼橋設計においては,過去30〜40年間に渡り,鋼重量ミニマムを基本コンセプトとする設計が採用されてきたが,最近では,一層のコスト縮減を意図した,桁本数の少ない少数主桁橋への移行,あわせて連続合成桁の建設が1990年代の終わり頃から活発化している.このような極めてシンプルな新しい橋システムを導入することで,工場制作費(塗装まで)ベースで約10%強のコストダウンが可能となる試算結果が報告されている.一方で,以上の橋システムは極めてシンプルな構造形態のため,更なるシンプル化によるコストダウンは限界となり,最近ではコスト縮減に向けた閉塞感が漂っている.
著者は,この打開策として,このシンプルな構造への改革,移行に加えてデザイン改革の同時導入を提唱している.具体的には,これまでの弾性設計から,塑性の範囲に踏み込んだ設計法の導入である.より具体的には,コンパクト断面設計の導入により,前述の合成少数主桁形式の終局曲げ強度は現行設計に比べて約25〜30%のアップが期待できる.しかも,腹板の板厚を現行の道路橋示方書の規準より更に薄くしても全塑性モーメントが達成できることを示す.
以上より,本研究では,正曲げを受ける合成桁を対象とし,その終局強度特性を明らかにし,あわせて強度評価法を提案する.モデルのアスペクト(垂直補剛材間隔/腹板高)比は3.0(現行道路橋示方書では最大1.5まで許容)とし,荷重載荷については,活荷重合成桁を念頭に,鋼桁状態に荷重を作用させて初期内力を導入し,その後床版を取り付けた合成桁に荷重を負荷する.このような取り組みは過去に例をみない実際に忠実な取り組みである.腹板高,板厚,材質,初期導入な内力をパラメータとした36モデルを用い,弾塑性有限変位解析より耐荷力を明らかにする.
本研究で得られた結論を要約すると以下のようになる.
1)終局条件としてコンクリートのひずみ(εc = 0.0035)を設定すると,ほとんどのモデルで,降伏モーメントは超えるが,全塑性モーメントには達しない.
2)上記の制約を解除すると,ほとんどのケースで全塑性モーメントに達する.すべてのモデルの塑性中立軸は床版内にあり,この場合,AASHTO/LRFDやECの設計式と対応する.
3)上記1),2)にいずれが真実であるかについて,コンクリートの構成則を変更した解析,また実験が必要となることが明らかになった.