大野 勝己

7・13新潟県中越豪雨災害における斜面災害の調査・研究

大塚 悟

平成16年7月13日に発生した新潟県中越豪雨災害では、五十嵐川・刈谷田川の洪水により多大なる被害が発生したが、傾斜地の土砂災害により交通の遮断や宅地被害のほか、死者2名、負傷者1名の人的被害が生じた。
豪雨による土砂災害は毎年多くの人的被害を生じている。平成11年の広島豪雨災害を契機に土砂災害防止法が制定され、土砂災害の防止・軽減に向けたソフト対策が推進されている。しかし、土砂災害は降雨特性はもとより、地形や地盤特性による影響を大きく受けることから、運用に当たっては地域の災害特性を収集把握することが不可欠である。また、効率的な防災対策として土砂災害の警戒・避難システムの運用が期待されているが、危険斜面の場所と崩壊時刻を予測するためにはシステム構築の基本データがあいまいな問題点がある。
本研究では7・13新潟豪雨災害における土砂災害をデジタル・アーカイブとして記録するとともに、土砂災害の特性を分析した。また、土砂災害警戒・非難システムの構築を目的に気象庁の2.5kmメッシュ降雨データの収集ならびに斜面の崩壊時刻の聞き取り調査を実施して、雨量指数を用いた崩壊予測の可能性について分析を行った。以下に、本研究にて得られた知見を箇条書きに記す。
@累積降水量と災害発生件数の間には相関関係がある。
A7・13新潟豪雨では、土砂災害の約半分が土砂災害警戒区域内で発生した。しかし、土砂災害警戒区域外での被害も全体の約10%ほど存在した。斜面のがけ下端と被害家屋までの距離よりも斜面高さが高ければ土砂災害受ける可能性があることが分かった。
B聞き取り調査により59件の崩壊時刻を特定した。地盤中の降水量を推定する実効雨量の崩壊予測への適用性について検討し,半減期の満たす要件について明らかにした。また崩壊事例から逆算した実効雨量に関する検討から、崩壊深さや地域を限定することによって崩壊予測の精度を向上出来ることを示した。