北村 秀一
東北新幹線トンネル施工現場より採取した砂の力学特性
豊田 浩史
土の強度定数c,φは,各種構造物の基礎の設計や地盤の安定性において最も重要なパラメータである.強度定数は土の種類によって異なることに加えて,間隙比,飽和度,応力履歴などの土の状態によって変化し,また試験時の拘束圧や排水条件,せん断速度などの影響を受けることによって大きく変化する.したがって,各種構造物の基礎の設計や地盤の安定性の検討に用いる土の強度定数を唯一に決定することは容易ではない.土のもっている強度定数を正確に求めるためには,現場で土が受けると予想される破壊条件を十分に考慮に入れたうえで,試験を行うことが必要になる.また,地盤の破壊で問題となるのは,ほとんどの場合がせん断破壊である.よって,その土のせん断特性を把握することは,破壊を含む地盤の工学的問題を考えるうえで不可欠なものとなる.
本研究では,現在着工中の東北新幹線(八戸〜新青森間)において,六戸トンネルより採取した試料を用いて三軸圧縮試験を行い,せん断特性を調べた.六戸砂から密な供試体とゆるい供試体を,それぞれ間隙比が一定になるように作製し,三軸試験装置に設置後,二重負圧法を用いて飽和させた.p'=(σ1'+σ2'+σ3')/3(平均有効主応力)は,25kPa,50kPa,100kPa,200kPaの4ケースを行う.バックプレッシャーはすべての試験ケースにおいて200kPa載荷した.試験は軸ひずみ速度0.0417%/min,p'=(σ1'+σ2'+σ3')/3一定,排水条件で行った.また,クリープ試験も行って,さまざまなひずみレベルにおけるクリープ挙動についても検討した.
本研究で得られた結果を以下に示す.
1)密な六戸砂のせん断抵抗角φdは約41.4°,ゆるい六戸砂のφdは約32.2°,粘着力cは両者ともに5kPa程度である.
2)密な六戸砂のせん断抵抗角φdは,ひずみ軟化により2割弱低下している.粘着力cに関してはひずみ軟化による強度低下はほとんどみられない.
3)密な六戸砂のせん断剛性は,ゆるい六戸砂のせん断剛性に比べ,0.01%のせん断ひずみレベルで約2倍強の値を示す.
4)六戸砂のクリープ挙動については,クリープの影響は小さく,単調載荷の応力‐ひずみ曲線に戻る傾向がある.