星野雄亮

河口域を対象とした波、流れ、地形変化に関する研究

細山田得三


 平成16年7月13日の新潟県の豪雨災害では、五十嵐川(三条市)、刈谷田川(中之島町)、猿橋川(長岡市北部)において河川の堤防決壊による洪水被害が発生した。一方、阿賀野川流域では洪水氾濫による被害は発生しなかったものの、土砂災害は散発的に発生し、水位・流量ととも警戒値を大幅に越えた地点がある。

 阿賀野川下流部の治水安全上で課題の1つとして河口砂州が挙げられる。阿賀野川の河口砂州の問題点として、まず、砂州による河口閉塞により、洪水時に水位が上昇し、水害が発生しやすくなる。さらに、砂州に土砂が溜まることにより、河口部付近の飛砂、船舶の安全な航行への支障などの影響がある。また、豪雨時には、フラッシュ現象という川の水が勢いよく流れることによって、砂州は削られる。砂州が取り除かれると、塩水遡上が発生し、塩水による取水施設への被害が懸念されている。また、河口部に住む生物への影響がある。河口砂州の動態を理解することが重要である。

 本研究では、数値シミュレーションを用いて、モデル地形の河口域の波、流れを表現する。さらに、多方向不規則波と海浜流による漂砂を使い、河川を加えた地形変化を行い、河口砂州を表現することを目的とした。なお、フラッシュ現象により砂がなくなった状態から、海岸波動モデルによる冬季での砂州形成を再現する。

 数値シミュレーションには、より実海域に近い多方向不規則波を用いた。波浪緒元により、まず方向スペクトルのプログラムに代入し、次にそのデータを造波信号の作成プログラムからデータを出力する。そのとき各造波境界上の水位の時系列とし、多方向不規則波は成分の重ね合わせとして表示する。また、波を修正ブシネスク方程式によって再現した。そして底質移動とこれに伴う海底地形変化の計算は、浮遊砂と掃流砂を考慮したベイラードによって提案されたモデルを用いて行った。

 以上に示した計算を時間発展させる際には、1ステップ内で波動場、海浜流場、底質移動及び海底地形変化の計算をすることで、各要素が互いに影響を及ぼし合うため、実現象により近い現象が計算機上で再現できるようになっている。

 結果として、河口域のモデル地形ではあるが、冬季での砂州形成を表現することができた。さらに、河口砂州が形成していくことを時間的、空間的に把握することができた。