齋藤 健治

改質アスファルトコンクリートの疲労特性評価と疲労寿命予測に関する研究

丸山 暉彦

近年,わが国の道路舗装は,車両の大型化や交通量の増加などにより,非常に厳しい条件下に置かれており,これまで以上に供用初期でのわだち掘れの発生やすべり抵抗性の低下が問題となってきている.このため,通常使用されるストレートアスファルト(以下,ストアス)に比べて耐流動,耐摩耗,すべり抵抗に優れた改質アスファルトU型および超重交通用改質アスファルト(以下,改質U型,超重交通用)が開発され,広く運用されている.しかし,これらの改質アスファルトを使用したアスファルトコンクリート(以下,改質アスコン)の疲労特性についてはあまり検討が行われていない.また,改質アスコンは,通常のストアスを使用したものよりも疲労寿命が長いことを定性的に示している研究はいくつかあるが,定量的な性能について言及している検討はほとんど行われていない.さらに,平成13年に舗装の構造に関する技術基準が改正され,新しく舗装の性能指標として疲労破壊輪数が導入され,舗装の耐久性を定量的に表すことが求められている.しかし,この指標の基準値はストアスを使用したアスコンに対するものであり,改質アスコンに対する基準値は特に規定されていない.
そこで本研究では,ストアスおよび改質アスファルトを使用した新規の密粒度アスコンに対して繰返し曲げ試験を実施し,各種アスコンの疲労特性を評価した.なお,実舗装のアスコンの劣化状況も考慮するため,加熱による促進劣化を施した各種アスコンに対しても繰返し曲げ試験を行い,その結果を元に疲労特性を評価し,改質アスコンの耐久性に関して検討した.また,アスコンの疲労特性を検討するにあたり,劣化を施したアスコンからバインダを回収してアスファルト性状試験を行い,バインダレベルにおける劣化特性,および耐久性について検討した.各検討により,改質アスファルトは,耐久性に優れていることが分かった.
さらに,実舗装に改質アスコンを使用した場合の疲労寿命についてストアスを基準として相対的に予測することにより,改質アスコンの長期供用性に関して検討した.疲労寿命予測の方法は,室内において劣化も考慮したアスコンの疲労特性と実舗装の交通履歴,ひずみ履歴に基づいて,アスコンの受けるダメージを推定して破壊する時期の予測を行った.また,いくつか条件の異なる実舗装のデータに基づいて疲労寿命の予測を行い,交通履歴,ひずみ履歴および温度条件の違いによる疲労寿命の特性について検討した.この検討により,改質アスファルトを使用した場合,ストアスを使用した場合に比べて長期供用性に優れていることが分かった.