三重堀 健志

鉄道新駅周辺の開発動向と設置効果に関する研究 −新潟都市圏4地区を対象として−

中出 文平、樋口 秀

地方都市圏では、モータリゼーションの進展に伴う自動車利用への依存が、市街地拡大に拍車をかけ、人々のライフスタイルにも変化を及ぼしてきた。近年、持続可能な都市形態としてTOD(公共交通指向型開発)が注目されており、地方都市圏でのTODを考慮したコンパクトな都市の実現が望まれている。そこで、公共交通として鉄道に着目し、その中でも新駅を取り上げ、新潟都市圏の4新駅周辺地区を対象として、新駅設置による周辺の市街地形成とその効果を検証し、新駅設置によるコンパクトな市街地形成のあり方について提案した。
研究では、まず4新駅周辺地区をTODの概念を考慮し指標を用いて相対比較した。その結果、駅周辺では一貫して人口は増加しているが地区により密度が異なる市街地が形成されていた。また、各地区で道路基盤や駅インフラの未整備が確認され各地区の市街地の水準としての問題が明らかになった。
そこで、各地区の新駅設置及び市街地形成過程に着目し、各地区の開発の動向を探った。その結果、4新駅は住民発議により現状の交通利便性の改善など前向きな考えでの設置であったことがわかった。しかし、駅によっては新駅設置時に明確なビジョンや周辺の土地利用の方針が欠如していたことが問題点として浮かび上がった。一方、地区の市街地形成過程では全地区で一貫して建物立地は増加していたが、市街化の速度には地区で差が生じていた。また、駅付近で共同住宅や商業機能が集積した地区もあるが、全体としては駅付近よりもその外側で多くの開発が行なわれ、市街地拡大の現状が浮き彫りとなった。
そして、新駅設置と市街地形成過程の相互の関係に着目し、新駅設置前後での市街化状況により大別される2パターンに該当する2地区を詳細検討地区として抽出し、新駅設置による周辺地区への設置効果を検証した。分析では地区での開発行為等と住民生活に焦点を当て、実態・意向調査を行った。その結果、駅周辺での開発行為等に対しては、用地取得、土地利用、設計、販売など様々な面で、新駅の存在が大きく寄与していることが明らかになった。また、駅周辺という立地条件を活かし、地区住民のために住環境、交通利便性、周辺施設を提供したいとの認識もあった。一方、周辺地区の住民生活に関しては、駅利用者は地区の半数程度であるが、駅付近の住民を中心として高頻度に利用していた。そして、駅設置と市街化の相違が駅の利便性、駅周辺のインフラ整備への満足度に表れた。しかし、多くの住民が新駅設置を重要視し、新駅の存在が生活に大きな影響を与えていることからも、ある程度の新駅設置効果が確認できた。
以上より、地方都市圏でも新駅設置は周辺地区にある程度の効果をもたらしていたが、一方で設置手法やそれに伴う駅周辺の整備に課題が残り、TODを考慮した市街地形成には工夫が必要である。