松井 享司

地方都市におけるごみ焼却施設の立地に関する研究 −新潟県をケーススタディとして−

中出文平 樋口秀


 ごみ焼却施設は、都市にとって必要不可欠な施設にもかかわらず、生活環境に対して負の影響が懸念されることから近隣への立地が嫌われる施設である。そのため、市街地から離れて立地していると考えられる。そこで本研究は、今後の循環型社会の構築に向けて困難となりえる市街地から離れて立地したごみ焼却施設に着目し、地方都市を対象にその施設の立地実態を把握し、問題点を整理することを目的としている。

 まず、新潟県の当施設の土地利用規制区分から分析を行う。その結果、大半が市街地から離れ、都市計画区域内であっても用途地域の指定のない地域に立地する施設が30施設中18施設と半数以上を占める。また、それら施設規模は市街地に立地するよりも大きい。そして、移転や新設立地した施設は老朽化や規模拡大による増設が現地で行えないため市街地から離れた位置に立地をしてたことが明らかとなった。これは、当施設のような都市施設は開発許可の適用除外にあたり、どこへでも立地可能となり、より広大な土地を求め市街地から離れたことを助長している。そのため、市街地から離れて立地する施設の周辺施設数は市街地に比べ少なく、他施設との連携が図られにくく、単独で立地する施設すら存在した。

 次に立地特性を把握したところ、市街地に立地する施設は用途地域の縁辺部に立地し、幹線道路へのアクセスが良いが、都市計画区域外では、その反対に用途地域や幹線道路のアクセス距離が遠く特性をもつ。また、市街地外では大半が用途地域近辺に立地し、集落や幹線道路からも近距離に位置していることが明らかで、市街地から離れた立地が必ずしも隔離された立地ではないことが窺えた。そこで、特に都市施設の整備が非効率になりやすい緩規制地域での立地に着目し、異なった立地特性を持つ3施設を詳細対象と選定する。選定条件は、比較的中心で集落や幹線道路が近い立地をした市街地近郊立地、縁辺部に立地し集落と幹線道路の近い縁辺部立地、そして、縁辺部に立地し集落と幹線道路が遠い閉鎖性立地とした。

 市街近郊立地では,周辺住民からの迷惑意識は高く,今後の施設整備に還元機能を求める意向も強く,これは人家が近隣に立地するようになったことと,収集車の主要経路が集落を横断していることから,他地域からのごみの搬入が頻繁に通ることで収集車に対する迷惑意識は高くなったと考えられる.また,閉鎖性立地は,農地に囲まれた立地であるため,収集車からのごみの撒き落としやダイオキシンによる汚染米の危惧する意識が高い.しかし,他の施設に比べ今後の施設整備を求める意向に還元機能を要求することは少なく,迷惑意識だけが定着し,施設の安定性を求める結果と考えられる.そして,縁辺部立地では,他の施設が集積していることで,周辺住民の迷惑意識を抑制していることが考えられる.

 このように、緩規制地域に立地する施設では周辺環境と調和するために還元機能の重要性が示された。