田中 洋

地方都市における区域区分の当初指定とその後の運用に関する研究

中出 文平、樋口 秀

現在、地方都市では依然として市街地の拡散が進行している。今後、持続可能な都市を目指していく中で、市街地の拡散を抑制することは重要であり、その抑制を目的とした区域区分を適切に運用していく必要がある。これまでの研究により、当初指定以後の区域区分指定の変遷については、定量的・空間的な分析が行われ、明らかにされてきた。しかし、当初の区域区分はこれまでに明らかにされていない部分も多い。そこで、本研究は主に地方都市における区域区分の当初指定に着目し、その実態や経緯を明らかにし、地方都市の区域区分指定のあり方について考察する事を目的とした。
まず、区域区分前後の状況について定量的・空間的な分析を行い、地方都市の区域区分指定の特性について明らかにした。当初の市街化区域とその直前の用途地域から、当初の市街化区域の指定について分析を行った。その結果、地方都市圏の都市は、三大都市圏の都市と比較して、当初の市街化区域を広めに指定していたという傾向が見られ、ほとんどの都市が指定地域を拡大し、指定のかけかえを行っていることが明らかとなった。また、市街化区域内の市街地の充填状況からも、当初指定時の市街化区域には全体的に余裕があったことがうかがえる結果が得られている。
また、当初の市街化区域の指定状況と、その後の市街化区域の変遷状況から、対象都市89都市を分類し、代表的な4パターンについてより詳しく分析を行った。その結果、当初の市街化区域をコンパクトに指定している都市は、人口の多い求心性の高い都市や、市街化に関して何らかの制限がある都市、人口減少が見込まれているような都市が含まれており、一方で、当初の市街化区域を広めに確保している都市は、当時産業の成長が見込まれていた都市や、市街化の制約が少ない都市が含まれていた。これらの都市が持つ特性が区域区分指定の特性に現れていると考えられる。
次に、地方都市の区域区分指定の実態を明らかにした。ここでは、代表的な4パターンの中から都市を選定し、分析を行った。その結果、農政との打合せが多く入念な協議が行われていた事、住民の要望は市街化区域・市街化調整区域編入の両論が挙がっており、中には区域区分指定そのものの延期を求める意見が挙がっていた事、当初指定を行った時期はちょうど時代の転換期にあたり、人口フレームが全体的に高めに設定されてしまった事、指定が除外された地域は優良な農地や丘陵地であったこと等が明らかとなった。
以上の研究結果から、地方都市の区域区分の当初指定とその後の運用について、当初の市街化区域の指定は全体的に広めに指定される傾向にあったことと、その結果、その後の市街化区域の拡大や市街化の動向にも影響していることを明らかにすることができた。また、今後の地方都市における区域区分指定においては、市街化区域の適正な規模への見直しを行う必要性について述べ、本研究の総括とした。