角井 秀規

地方都市中心部における中低層共同住宅立地に関する研究

樋口秀・中出文平

現在、地方都市では市街地の拡大や居住密度低下等が顕在化している。一方、都市中心部では家族世帯が居住継続を希望しても世帯構成の変化に対応した住宅が得難い現状が指摘されており、受皿となる住宅供給の誘導と居住機能の充実が望まれている。
そこで本研究は長岡市中心部(1970年DID)を対象とし、近年立地した中低層共同住宅の立地動向や経緯から立地の現況と課題を明らかにし、居住継続可能な共同住宅の整備へ向けた方策の検討を目的とする。
まず国勢調査を用いて地区特性を分析した結果、中心商業地域から中心部縁辺へ向けて人口・世帯数の増加傾向は強くなっており、人口・世帯数が増加傾向にある地区では共同住宅の床面積も増加していることが明らかとなった。
次に、建築確認申請の分析と現地調査より、立地位置、従前用途、立地形式から立地特性を把握した結果、商業地域内では敷地面積や住戸面積が狭くなる傾向がみられた。
従前用途では市街地内農地や低未利用地と比較して業務系・住居系用地で小規模なものが多くみられた。家族向け住棟の建築には住棟の配置や駐車場の確保の面で効率の良い土地利用の工夫が不可欠といえる。
立地形式は建物に囲まれた敷地への立地である充填型と、隣接する敷地の建物によって完全には囲まれていない敷地への立地である非充填型に分類することができ、充填型では敷地面積が小規模なものが多くみられた。また、これら立地特性により住棟を分類した結果、商業系用途地域以外の地域への立地が58.3%と過半数を上回っていた。今後は充填型立地による土地の高度活用を推進する必要がある。
立地経緯をみると住棟の建築は相続税や固定資産税の税金対策が主目的であり、採算性が重視されていた。家族世帯向けの住棟については建築負担の大きさと採算性の低さが、住棟の中層化については建築費用の増大や近隣への影響がそれぞれ課題となっていた。
家族世帯の安定した入居を確保するためには採算性を確保し住棟の建築を促進することが重要であり、中心部での居住継続と人口の確保に対しては家族世帯の居住に対応した住戸面積50u以上の良質な共同住宅を整備することが必要である。
以上より、居住継続可能な共同住宅の整備に対して、住棟を家族向けに限定した上で建築費や維持修繕に伴う負担を軽減する補助金の支援と、充填型の立地に対しては土地の高度活用を目的とする中層化の支援を支援策として提言する。