岩本陽介

都市計画区域マスタープランにおける計画白地の土地利用方針の提示に関する研究 −都道府県と市町村の関係に着目して−

中出文平・樋口秀

わが国では、急激な人口増加時代が終焉を迎え、都市は成長から安定、成熟の時代へと変化している。しかしながら、特に地方都市では、依然として無秩序な市街地の拡大が進んでいる。そこで本研究では、平成12年の法改正により創設された区域マスでの、計画白地の土地利用方針に着目し、策定過程における問題点を明らかにし、区域マスの白地方針に求められる役割を考察することを目的とする。
まず、都道府県に対しアンケート調査を行い、白地方針の提示形態及び策定時の市町村との関係について把握した。その結果、将来市街地を明示した白地方針を提示したのは、約半数に留まることが明らかとなった。また、記載する将来市街地の選定やその後の調整過程で、都道府県が主導した場合と市町村が主導した場合に大別されること、また将来市街地を記載しようとしたにもかかわらず、策定過程で記載に至らなかった場合もあることが明らかとなった。この結果をもとに、都道府県の分類を行い、5つの対象県を選定した。
将来市街地を記載したケースとして、策定過程で県が主導的な役割を果たした長野県、市町村の意向を反映した白地方針を提示した宮城県、県と市町村が調整ながら策定を進めた熊本県を調査した結果、策定の進め方により、白地方針で提示される将来市街地の考え方に相違があることが明らかとなった。また、福井県の調査結果からは、将来市街地を明示しない白地方針での計画白地の土地利用コントロールの仕組みについて考察した。
次に、計画白地を6地域に区分した白地方針を示した新潟県の調査からは、白地方針の市町村案と県修正案の比較により、県と市町村間で計画白地の開発に対する考え方の乖離があること、特に市町村は、できるだけ開発が可能な土地を確保しておきたいという意向が強いことが明らかとなった。また市町村は、6地域区分で開発を想定する地域の指定に際し、市町村マスの内容から大きく乖離した案を提示する例が多数見受けられた。
以上の研究結果から、白地方針で将来市街地を記載することの是非、区域マスと市町村マスの役割分担、白地方針に対する都道府県と市町村の認識の違いを問題点として指摘し、区域マスの白地方針の役割として都道府県の都市計画の制度運用の指針を示すこと、また、白地方針を介して市町村の土地利用計画に対し関与できる仕組みを構築することの必要性を提言した。