藤本恵司

バンコクにおける軌道系公共交通機関との連携を考慮したバスネットワークの再編計画

佐野可寸志

バンコクは急激な人口増加,自動車の普及等により,深刻な交通渋滞とその関連問題を抱える大都市の一つである.この問題の原因は様々であるが,本研究では公共交通機関のサービスレベルの低さに着目した.公共交通機関は高架鉄道BTSスカイトレインとバスが代表的であるが,BTSはまだ新しく,当初見込んでいた乗客数には程遠い現状であり,公共交通の90%以上をバスが占めている.しかし,現状のバス路線は計画的,効率的な輸送形態となっていない.そこで本研究ではバンコクの地域特性・個人属性をふまえた交通手段選択モデルを構築し,軌道系公共交通機関との連携を考慮したバスネットワークの再編による利用者便益を主眼とした効用の最大化を目的とする.
バンコク中心部SIAMにおいて,公共交通機関(エアコンバス・赤バス・BTS)と自動車を対象としたアンケート調査を行い,その集計分析結果より,バンコクにおける交通行動の特性を把握した.次に,その集計分析結果を用いて交通手段選択モデルを構築した.交通手段選択モデルには非集計多項ロジットモデルを採用し,推定の結果,全体として約70%(尤度比=0.4)のモデルを構築した.
バスネットワークの再編計画では,まず,現況交通をJICA STRADAの均衡配分・トランジット配分を用いて再現し,その配分結果や希望線図,バスの重複路線図等から問題点を把握することによって,新規バスネットワーク計画の手がかりとした.それらの問題点をふまえた結果,本研究での新規バスネットワーク計画では,ゾーンバスターミナル化,外々交通を結ぶ環状路線,需要・混雑度にあった路線数・運行頻度の設定といった路線の再計画を基として,BTSのパスカード化による料金値下げを段階的に行った新規計画0から新規計画4までの5つの計画について評価した.その結果, BTS料金を最も低く設定した新規計画4が,自動車から公共交通機関への利用転換が約3%と最も多く,かつ,BTSの乗客数・料金収入が最大,平均混雑度・乗り換え回数等が小さいなどといった評価から,本研究において最も望ましい計画であるとした.
今後の課題としては,より計画的,効率的なバスネットワークを計画すること,地域特性・個人属性を細分化したより精度の高い交通手段選択モデルを構築することなどがあげられる.