須賀 由美子

地方都市におけるバス運行の定時性評価に関する研究

佐野 可寸志

バスのサービスレベルを決定する要因としては、運行頻度、所要時間、運賃などが挙げられるが、運行時刻の定時性も重要な要素である。定時性の確保は、利用者のみならずバス事業者にとっても、利用者増加に伴う収益の増加や折り返し時間減少によるコストの削減につながる。そこで本研究は、バスの運行定時性の向上がバス利用者と事業者にもたらす便益を推計することを目的とする。
バス利用者を対象に行ったアンケート調査より、利用者の待ち時間推計モデルを構築し、定時性向上によって、減少された待ち時間を貨幣タームに変換して、利用者便益を推計した。その結果、現在のバスの遅れ時間が0分となったときの利用者の待ち時間は、平均で75.1秒減少することが分かった。これに、時間価値原単位(0.54円/秒)を乗ずることによって、利用者便益は40.8円/人・回の便益額となる。この金額が利用者の支払う費用のうちの21.8%を占めることがわかった。
定時性の向上によるバス事業者の便益は、次の2点からなる。まず、利用者転換による運賃収入の増加である。定時性向上によって、停留所での待ち時間の減少というサービスレベルが向上することから、現在のマイカー通勤者及びその他のバス以外の交通手段選択者がバスへ転換することが期待される。従って、このバス利用者の増加が事業者の運賃収入の増加となる。そのため、PT調査データをもとに、非集計多項ロジットモデル(Multinomial Logit:ML)を用いて、手段選択モデルを構築した。構築したモデルを使って、バスの定時性が向上されたときの、バスへの転換量を求めた結果、定時性向上後のバス通勤者は3人増加した。この3人の転換は、定時性向上前のバス利用者の11.5%に相当する。また、バス利用者のうち通勤者の占める割合は、15.7%であることから、転換者の全体に占める割合はおよそ1.8%となる。したがって定時性向上によるバス利用者の増加の割合は1.8%であるということが分かった。第2に、運行時間短縮における運行コストの削減である。運行定時性が向上することによって、運行時間も短縮される。運行時間と折返し時間が短縮されバスの運行定時性が向上した場合の運行経費は、定時性向上前の費用を100%としたとき、92.8%となり7.2%の削減効果があることを定量的に示すことができた。
以上の結果より、定時性向上がバス利用者とバス事業者にもたらす便益を定量的に示すことができた。