下田 妙

都市内物流における輸送業態・トラックサイズ選択モデル

佐野 可寸志

貨物輸送は人の輸送と同様に、社会経済活動を維持するための重要な要素の一つである。わが国の国内貨物輸送量は、近年、産業の発展・高度化に伴い、輸送量全体が大きく延びている現状にある。このような実態の国内貨物輸送の大半をトラックによる輸送が占める現状のなかで問題とされるのは、貨物車の走行時に排出される二酸化炭素(CO2)等の温室効果ガスや窒素酸化物(NOX)による環境への影響である。
このように貨物車輸送が与える環境への影響を考えていくことは重要であるが、人流に比べると物流に関する研究は少なく、その実態やメカニズムには未解明な部分が多い。例えば、物流と一口に言っても、そこには多数のステークスホルダーが、流動ロットサイズ、輸送頻度、輸送業態、トラックサイズ、自家用/営業貨物車選択、輸送ルート、配送時間等の輸送形態等、多段階の意志決定を行っており、その実態やメカニズム等を明らかにするのは容易ではない。本研究では、その物流のメカニズムの一つである輸送業態とトラックサイズを決定する各主体の利潤最大化行動を再現する非集計ベースのモデルを構築する。
貨物車業態やトラックサイズが決定される要因を、東京都市圏物資流動調査のデータを用いて抽出し、それらの要因を変数とするネスティッドロジットモデルを構築した。ネスティッドロジットモデルの第一段階は、自家用貨物車、営業貨物車(一般貨物運送用)、特別積み合わせ運送の3種類に分類し、第2段階は、積みあわせの有無、第3段階では、トラックサイズ(大型貨物車、小型貨物車、軽貨物車)を決定する。既存データを使用しているため、貨物車業態やトラックサイズを決定する個別の要因を抽出することが不可能であるため、モデルの精度は十分とはいえないものの、的中率70%以上のモデルを作成することができた。
このモデルを、自動車税と燃料税の負担増加という環境税を導入した際に、貨物車業態やトラックサイズの決定行動にどのよう影響を与えるかを上記のモデルを使用して定量的に把握した。その結果、環境税の導入により輸送コストが上昇すると、効率の良い営業用貨物車に、自家用貨物車からシフトすることが確認できた。輸送方法の変化も含めて輸送業態やトラックサイズが変化した際のトータルのエネルギー消費量を、燃料税導入の前後で比較した結果、環境税が貨物車交通発生エネルギーに与える影響を定量的に把握することができた。