酒井大輔

貨物車消費エネルギーと都市特性に関する研究

佐野可寸志

高度経済成長期より我が国では,交通手段を自動車に大きく依存した社会構造が継続しており,都市部における深刻な渋滞を引き起こしただけにとどまらず,自動車によるエネルギー消費の増大,大気汚染,騒音などに代表される社会問題となっている.特に,本研究で着目するエネルギー消費の急激な増大は,今後地球環境を考えるなかで重要な問題であり,早急的かつ永続的なエネルギー低減策が必要であると言える.エネルギー消費の問題は貨物車交通に関しても例外ではなく,運輸部門におけるエネルギー消費の約3割をしめており,その存在が重要であることは明らかである.自動車交通がエネルギー消費に与える影響要因として,都市特性や都市構造といったもが考えられ,既存研究においても,自動車交通のエネルギー消費と都市特性や都市構造の関連性を扱ったものが存在するが,自動車車交通,バス交通のみを考えたものが多く,貨物車に限ったものはあまり行われていないのが現状である.そこで本研究は,貨物車のエネルギー消費と都市特性の関連性に着目し,エネルギー消費に影響する要因を分析した.
他の都市に依存しない比較的自立した70都市を対象とし,相関分析,重回帰分析を用いて分析を行った.分析には統計的な都市指標だけではなく,GISソフトを用いて用途地域の分散度合いを算定し,指標として用いた.結果,エネルギー消費量に影響する都市特性は,主として都市の広がりや集積に関する指標である知見を得た.したがって,市街地拡大の抑制,中心市街地の活性化による中心部への人口充填等の政策が,貨物車のトリップ長を抑制し,都市問題のみならずエネルギー消費等の環境問題に関しても有効な方策であると言える,一方,現在顧客のニーズに合致した多頻度配送,小口・少量配送が増加していることから,今後貨物車のトリップ数,トリップ長の増加の懸念がある.この点を踏まえても市街地拡大の抑制や人口集積の効果は,1台当たりの積み込み量(ロットサイズ)を大きくする効果が見込め,トリップ長の減少,ひいてはトリップ数の減少という相乗効果をもたらす期待が持て,都市問題の改善ばかりではなく貨物エネルギーの増加対策に不可欠であることと言える.