荒井秀和

観測リンク交通量を用いた貨物車OD交通量の推定

佐野可寸志

都市内物流の研究では,輸送経路選択や物流政策の計画・評価に貨物需要予測が行われているが,予測のベースは重量単位の貨物流動量である.しかし,実際に物流政策や交通規制といった対策が行われる際に,これらの計画や立案の評価に用いられるのは貨物OD流動量ではなく貨物車OD交通量である.実際の都市内輸送においては,複数の配送先を回る巡回型の輸送が多いため貨物と貨物車の動きは大きく異なっており,貨物OD流動量から貨物車OD交通量への変換を高い精度で行う必要がある.
そこで,本研究では従来の貨物OD流動量から貨物車OD交通量への変換方法を,路側からの交通量調査やセンサーによる交通量調査で容易に得られる観測リンク交通量を用いて補正し,貨物車OD交通量の精度の向上を目指すことが目的である.観測リンク交通量は,直接観測で得られるデータであるため信頼が高く,観測リンク交通量を用いてOD交通量の補正することでOD交通量の精度が高められる.
本研究では,対象地域を長岡都市圏とし,道路交通センサスデータ用いて推定を行った.まず,貨物OD流動量抽出し貨物車OD交通量へ変換を行った.このモデルは精度向上のため貨物車トリップを出発・帰社・中間トリップに分解することで,それぞれの特徴を生かしている.出発・帰社・中間トリップを足し合わせ初期貨物車 交通量とした.精度は,R2=0.54,RMSE=162と既存研究と比べると良い結果とはいえない.
次に初期貨物車OD交通量を,観測リンク交通量を用いて修正した.修正にあたって観測リンク数を変えて修正を行った.観測リンク数は,本ネットワークの規模および対象地域の観測機等から全リンクの20%とした.今回対象としたネットワークにおいて実際に観測リンク交通量の計測が行われているリンク数がネットワークの10%程度であり,追加調査を行った場合でもプラス10%が限度である考えた.観測リンク数を20%としたとき修正貨物車 交通量の精度はR2=0.727,RMSE=126と共に向上した.観測リンク数が10%の場合と20%の場合では,20%の場合の方が高い精度の貨物車 交通量が得られた.また,初期貨物車 交通量を変えて同様の検証を行ったところ,初期貨物車 交通量の精度が良い方が修正結果も良くなることが分かった.