奥井 義昭

水耕栽培の培地改良を目的としたゼオライトへの各種成分の吸脱着の研究

松下 和正

ゼオライトは、吸着作用、イオン交換作用、触媒作用を持つ物質として、工学分野から農業分野まで昔から広く利用されている。また、タマネギやニンニクを水耕栽培で育成させる時、水中におけるカリウム濃度を1〜10mg/lに保持しておくことが非常に重要である。
農業分野におけるゼオライトの応用例の1つとして、吸着作用を用いた、土壌改良剤としての農業用ゼオライトがある。これは肥料の流亡を防ぎ、長期間肥料の効果を持続させることを目的としている。本研究では、この農業用ゼオライトに多量のカリウムを吸着させ、少しずつ脱離させて、水中のカリウム濃度を一定に保たせるゼオライトの研究・開発を行った。
本研究では『ZXY』という商品名の農業用ゼオライトと吸着用溶液である『ナキジンA』を用いて、固液比依存試験、温度依存試験、蒸留水溶出試験、pH試験、高圧試験を行い吸着機構の研究を行った。また、『ZXY』におけるカリウムの吸着特性をさらに詳しく解明するため、『ナキジンA』にK2SO4、K2CO3、KClをそれぞれ加え溶液の 吸着脱離試験を行った。吸着後、ろ液の定量分析をInductively coupled plasma(ICP)を用いて行った。
その結果、『ナキジンA』を用いた場合では、ほとんどの条件においてゼオライトからカリウムが溶出していた。また、100MPaの高圧下では溶出から吸着となったが、その量は微量であった。『ナキジンA』のカリウム濃度を1000倍とするためK2SO4、K2CO3、KClをそれぞれ加えた試験では、すべての条件においてカリウムは吸着挙動を示した。特に、K2CO3を『ナキジンA』に加えた条件の時は、K2SO4,KClを加えた場合よりも、カリウムの吸着量は約40%多くなった。
得られた結果より、Langmuir、Freundlichの吸着等温線を用いて解析した。濃度と吸着量の間に直線関係が得られ、K2CO3を加えた場合の方が、K2SO4、KClを加えた場合よりもカリウムが占める吸着サイトの数が多く、吸着が起こりやすいことが分かった。これは、K2CO3を『ナキジンA』に加えた時に沈殿物が生成し、吸着用溶液中の鉄、マグネシウムなどの陽イオンの濃度が減少しカリウムの割合が増えたためであると考えられる。
以上のことより、ゼオライトに多量のカリウムを吸着させる為には、ナキジンAにK2CO3を加えることが最も有効である。