丹野 智史

長岡市の合流式下水道からの越流水の水質挙動の解析と越流負荷削減対策に関する研究

藤田昌一,小松俊哉,姫野修司


 合流式下水道において降雨時に未処理下水が河川へ放流されることに対する改善の対策とその実行が急務となっている。本研究では長岡市の関東町吐き口(阪之上処理分区流から流入)において、その雨水吐き室の上下流に流量計、関東町ポンプ場屋上に雨量計を設置し、流量、雨量を1分間各で常時観測、上流側の流量計と連動し、越流開始水位になると同時に採水を開始するオートサンプラーを新たに開発し、2004年6月8日稼動を開始し、連続観測を開始した。それにおいて合流式下水道からの越流水(CSO)の正確な水質挙動を把握し、これまで明らかではなかったファーストフラッシュ及び雨水による希釈の現象を定量的に解明した。
その結果、越流開始直後に水質中の汚濁物質濃度(BOD、SS)が最も高くなり、その後汚濁物濃度は低下していく傾向が顕著に確認された。特にSSは晴天時の最大濃度約250mg/Lの2倍である500mg/L以上になることが判明した。その内訳を調べると、路面堆積物などのノンポイント汚濁、管渠内堆積物が70%以上の負荷量になることが分かり、合流改善の一対策として、路面清掃及び管渠内清掃が重要であることが判明した。
また、断続的に1日の間に4回以上も越流することも確認され、そのCSO把握に成功した。このことにより正確なCSO把握が出来たといえ、今後も継続的に調査を行っていく。
冬季においては融雪水、消雪パイプからの流入水の影響で常時、管渠内は満管状態であった。そのためこの期間には越流が定常的に起こっており、別途対策を講じる必要があることが示唆された。
CSOによる河川への汚濁負荷量を算出した結果、一回の越流で長岡市の下水処理場の一日の総排出量以上になることが判明した。本研究ではその対策としてCSOの越流水貯留を提案し、その設置規模とその効果を明らかにしたところ、日本下水道協会が定める当面の改善目標の一つである年間の越流回数(153回)の半減に必要な貯留規模は500m3であり、降雨に換算すると0.35mmであった。また、越流による負荷を半減させるためには5000m3必要であり、降雨に換算すると3.5mmであり、他自治体と比較しても建設可能な数値であった。また、分流並の汚濁負荷量にまで削減するためには、10000m3貯留でも削減不可能であり、他の改善対策との併用が必要であるといえる。これらのことより実際の長岡市における合流改善対策の提案を行うことができた。