奥田絵美

Ames変異原性試験を用いた雨天時道路排水の評価

小松俊哉 藤田昌一 姫野修司


 わが国はここ数十年間で著しく開発が進み、都市の大部分をコンクリートやアスファルトなどの不浸透区域が多く占めるようになった。雨水が浸透可能な区域は限りなく減少し、これにより今まで地下に浸透していた雨水も行き場をなくしてしまった。さらに、この雨水は大気中を漂う大気粉塵を取り込み、道路上に堆積している道路粉塵を洗い流し河川へ有害物質が流入する割合は不浸透区域の拡大に伴い増加している。その中には、変異原性を示す物質が存在していることが知られていること、道路排水中の物質の定性・定量分析は多くなされているがそれらの全体の毒性を評価した研究は数少ないことなどから、本研究では道路排水の全体の毒性を変異原性という指標を用いて評価することとし、Ames変異原性試験を実施した。

 評価は雨天時道路排水そのままのサンプルの変異原性の測定によって水環境中の生物に与える影響、水環境への負荷を考慮した。さらにそれらの排水が河川へ流入し、浄水工程に流入した時のことを想定し塩素を添加した際の変異原性生成能(MFP)の測定も行なった。

 本研究では、採水場所を国道17号線の道路排水の排水口とした。その理由としては、道路排水のみの採水が可能であることや幹線道路であるため交通量が多いことがあげられる。一定時間おきに採水したサンプルはただちに研究室に持ち帰り、DOC、SSの測定を行なった。また、それらを測定した後排水そのままのサンプルに関しては直ぐにCSP-800により吸着、DMSOにより脱離を行い、通常500倍の濃縮倍率でAmes試験を行った。MFPのサンプルに関しては、塩素添加後24時間、20℃で静置し前サンプルと同様の操作を行なった。

 雨天時道路排水は、初期の降雨によりSS、DOCなどが洗い流され、時間の経過ともに減少していくことが確認された。また、TA100+S9のすべてのサンプルにおいて擬陽性を示し、塩基対置換型の間接変異原性物質の存在が示唆された。また、変異原性強度はSS、DOC、降雨量などとは有意な相関を示さなかった。
また、雨天時道路排水が河川へと流入し、浄水工程に流入した際を想定し測定を行なった、MFPにおいてはTA100-S9条件でそのままの排水と比較して約1.65倍高くなり、採水開始直後のサンプルの増加率よりも降雨時間が1時間ほど経過してから採水したサンプルの方が高い増加率を示した。MFPサンプルも塩素を添加しない系と同様にSS、DOC、降雨量ともに有意な相関を示さなかった。
さらに、下水処理水などと強度の比較を行ったところ雨天時道路排水の強度はTA100+S9条件にて比較的高く、またMFPにおいても擬陽性を示したサンプルが多いことからその有害性が明らかとなった。