吉田広輝

RNAの配列選択的切断法を利用した低頻度および新規系統微生物の探索と実体化

大橋 晶良、井町寛之、原田 秀樹

近年、16S rRNA遺伝子を指標とした微生物群集構造解析により自然環境中には多様な微生物が存在していることが明らかになってきた。微生物の群集構造解析では環境試料からDNAを抽出し、16S rRNA遺伝子を標的としたユニバーサルプライマーを用いてPCR増幅を行い、クローンライブラリを構築する手法が広く用いられている。本手法において、特定の微生物群以外の16S rRNA遺伝子を解析するための手法として、PNA (pepitide nucleic acid) を利用したPCRクランプ法による微生物多様性解析手法が提案されている。しかしながら、この手法は厳密なPCR条件の制御が困難であることが知られている。
本研究では、特定の微生物群以外の微生物由来16S rRNA遺伝子を選択的に解析するため、リボヌクレアーゼH (RNase H)とオリゴヌクレオチドを用いた16S rRNAの配列選択的切断手法に注目した。本手法では、特定の微生物群由来16S rRNAに特異的な切断プローブを利用し、環境試料等から抽出したRNA中の特定16S rRNAをRNase Hにより切断する。次に、切断反応後未切断の16S rRNA断片を逆転写しPCR反応を行う。その後、PCR産物をクローン化することによって、特定の微生物群以外の16S rRNA配列を回収することが可能となる。従って、本手法では実際の環境中では存在量が比較的低い微生物グループ等の16S rRNA配列を選択的に回収することができると考えられる。
本研究では、嫌気性排水・廃棄物処理汚泥をモデル複合微生物群集として利用し、その中で最も高頻度で検出されるメタン生成古細菌(Methanosaeta属古細菌)の16S rRNAを選択的に切断し、未切断の古細菌由来16S rRNAをRT-PCR法とクローンライブラリ法で解析することにより本手法の有効性を確認を行った後に、実際の自然環境中で低頻度な微生物群を検出およびその実体化を目的とした。