小林 章

都市部航空写真における陰影領域の低減に関する研究

力丸 厚 向井 幸男  高橋 一義

 
近年、航空写真を用いて固定資産の評価が実施されるようになった。しかし、都市部では地形や建造物に起因する陰影領域が多く存在している。そのため、航空写真利用の目的を阻害する雑音、障害を低減することが望まれている。
そこで、本研究ではデジタル画像化した都市部航空写真画像に含まれる陰影領域を認識し、本来の土地被覆情報を復元することを目的とした画像処理手法の検討を実施した。
本研究で使用したデータは航空写真画像である。航空写真は、1996年1月16日に東京都霞ヶ関で撮影されたものである。撮影高度は1000mで、地上分解能は50cmで、航空写真の大きさは1kmである。
解析の流れの大筋は、陰影を認識して陰影領域を復元することである。陰影の認識の流れは、まずスキャン入力した航空写真画像がフィルム自体(撮影時に起因)もしくはスキャナーの性能によりカラーバランスが崩れている可能性があるので、カラーバランスを調整した。次に陰影を判断するために、正規化画像、陰影指標画像、IHS画像を作成した。そして、教師無し分類のクラスター分析によって、陰影領域を試行抽出した。この試行抽出したものから、陰影の頻度分布特性を把握した。最後に、陰影指標、明度、彩度のヒストグラムを用いて、陰影領域を抽出した。陰影領域の復元の流れは、統計量変換による補正と自動サンプリングによる補正の2つの方法によって、陰影領域の補正を行った。統計量変換による補正は、陰影領域と日なた領域の平均値と標準偏差を算出して、陰影領域の濃淡情報を日なた領域の濃淡情報に変換する処理を行った。自動サンプリングによる補正では、空間フィルタを用いて、陰影と日なたで条件付きのサンプリングをして、単回帰分析によって陰影領域の補正を行った。
本研究では、陰影指標、明度、彩度のヒストグラムを用いて、航空写真画像の陰影領域を認識して、陰影領域の復元を行った。ヒストグラムによる陰影領域の抽出をすることで、主観的な要因を軽減した。また、陰影領域補正の自動化によって、解析の効率化を図った。さらに、ヒストグラムの閾値決定手法の検討やサンプリング精度を向上させることが望まれる。陰影による障害を低くする画像処理技術手法を開発することができた。そして、固定資産等の把握に利用されることが期待される。