渡邉 映

過去の衛星画像参照による地上画像観測時点での積雪域平面分布推定手法の検討

向井幸男、力丸 厚

新潟県などの日本海沿岸域は世界有数の豪雪地帯である.雪は,雪崩や融雪に伴う洪水・地滑りなどの災害を引き起こす要因であり,新潟県では本年,19年振りの大雪となり昨年の中越地震の影響と相まって雪崩や雪の重みで家屋の倒壊が相次いで発生している.しかしながら,融けた雪は人々の大切な水資源である.雪はこれら相反する二面性を持っている.
雪を防災管理あるいは水資源として有効利用するためには,時間的・空間的・定量的に把握することが非常に重要になってくる.しかしながら,積雪の多くは山岳地帯に分布しており,人がその場所に行き積雪を連続的かつ広域的に観測を行うには,雪崩や遭難といった危険が伴うと同時に多大な人的・経済的資源も必要である.故に山岳地帯の降雪・積雪特性を把握することは非常に困難であり,衛星によるリモートセンシング技術を活用した研究が進められている.衛星リモートセンシング技術による地表面観測は,連続的・広域的に観測可能であり非常に有効であるが,雪の観測においては融雪期であるため不順な天候が続くことが多く,雲などの影響で地表面の情報が入手困難であり連続的な観測は困難である.
そこで本研究では,衛生リモートセンシング技術を活用し,積雪域の最新融雪状態を推定し水資源管理に有意義な情報を提供することを目的とした.融雪期であるからといって観測不可能ではなく,衛星の観測日に晴れていれば地表面情報を取得出来る.取得できた過去の融雪期の衛星画像から積雪分布履歴情報を把握し活用することで,衛星が観測出来ない日の積雪域平面分布を推定しようと試みた.解析手法はデジタルカメラを使用して地上画像観測を行い,その地上観測画像と過去の積雪分布履歴情報により他地域の広域的な積雪域平面分布を推定した.
積雪分布履歴情報は衛星で観測出来た画像から積雪域を抽出し,積雪域=1,無雪域=0と考えある地点毎に複数の画像を時間軸方向に累積したもので積雪頻度画像という.融けにくい地域では頻度が高く融けやすい地域は頻度が低くなる.地上画像観測を行った地点から視た積雪頻度画像による鳥瞰図を作成し,その積雪頻度鳥瞰画像とデジタルカメラで観測した地上観測画像とを重ね合わせ,地上観測画像の雪線に対応する積雪頻度鳥瞰画像の画素値を抽出して平面の積雪頻度画像により推定を行った. 精度向上の課題が残るが過去の衛星画像とデジタルカメラによる地上観測画像から観測時点での積雪域平面分布の推定が可能であることが分かった.