西 紘史

高頻度観測衛星データを用いたインドシナ半島における農地の営農環境把握に関する研究

向井 幸男、力丸 厚

東南アジアは世界有数のコメ産地であり、この地域の穀物生産は、将来の人口増加に伴う食料問題の解答例のひとつとして期待されている。このような東南アジアなどを含めた、世界の農地分布・変動を大陸レベルで把握しようとする動きは、急務であり、これまで衛星リモートセンシング技術を用いた取り組みが行われてきた。今後の農作物の収穫量確保や、計画的な土地利用・水資源使用のためには、営農期間や利水状態の変動から、農地の営農環境を把握することが重要である。
よって本研究では、複雑な営農形態を持つインドシナ半島の農地における、営農環境把握の検討を行うことを目的とした。

 解析手法としては、水の比熱・熱容量が、地表を形成する他の物質に比べ、特に大きいという物性に着目し、高頻度観測衛星の熱画像を用いて、日中と夜間の地表面温度差の時期変化から、農地の利水状態変化の把握を試みた。また、同時に植生被覆密度から植生の変化を把握することで、農地の営農環境は把握の検討を行った。使用した衛星画像は、NASAが運用しているEOS/TERRA MODISデータセットである。更に2000年度インドシナ半島土地被覆分布図を活用し、営農形態を把握した。

 まず、MODIS熱画像は、陸域におけるデータの欠損を、最低90%以上補完できるよう2001年のデータも使用し、7時期別に最大値合成を行った。そして、その昼夜温度差画像と植生被覆密度画像の変動解析をすることによって、そのパターン別に37クラスに分類を行った。その分類結果に、都市域の昼夜温度差から算出した温度差閾値を適用することによって、農地の利水状態の判別を行い、閾値以上の場合は乾燥状態にあると仮定した。また、植生被覆密度の変化別にカテゴリ分けし、営農形態の把握を行った。そうして作成された、営農形態別利水状態変動図を、高分解能センサ土地被覆分類画像および現地調査データによって検証・考察を行った。
考察の結果、昼夜温度差の変動=利水状態の変化と、植生被覆密度の変化とを同時に把握することで、インドシナ半島を含む東南アジアにおける、農地の複雑な営農環境を把握することができる可能性が示唆された。

 今後の課題としては、ミクセル問題・画像データ欠損問題の解決、現地の農地昼夜温度差の取得などが挙げられる。