長澤剛太

衛星データを用いた熱環境解析による農業気象情報の抽出

力丸厚 向井幸男


 現在、全国の農業機関では高品質米の安定生産が求められている。高品質米の生産条件の一つに気象条件がある。特に気温や日照時間等は大きな影響を及ぼすことが知られている。農業機関では気象の影響を考慮した生育予測や収量予測を行なっているおり、気象観測は不可欠なものとなっている。ところがAMeDASを代表とする地上における気象観測は点のデータであるため、実際の農地での気象と必ずしも一致しない場合が多くある。また近年は異常気象が続き、営農支援としてより詳細な気象情報が必要とされてきている。

 本研究では、衛星の観測する地表面温度と地上観測の気温データの関係から回帰式を算出し気温の空間分布を推定した。さらに得られた気温分布から農業気象情報の抽出した。衛星データは地上分解能が約1kmのMODIS-LSTデータを用いた。地上観測データはAMeDAS気温データを用いた。農業気象情報としては昼夜温度較差の空間分布、平均気温をもとに算出される有効積算気温の空間分布とした。

 昼夜気温較差を算出するうえでまず1日の最高・最低気温分布の推定を行った。MODIS-LSTデータとAMeDASの観測する最高・最低気温の関係から回帰式を算出し、回帰式をMODIS-LSTデータに適用して最高・最低気温分布を推定した。1日の最高気温分布と最低気温分布の較差を算出したのち、2004年8月の1ヶ月間における気温較差の平均値を算出した。

 有効積算気温は1日の平均気温を積算していくものであり、新潟県では出穂期から収穫期の目安としてコシヒカリで1000℃としている。そこでMODIS-LSTデータとAMeDASの観測する平均気温の関係から回帰式を算出し、回帰式をMODIS-LSTデータに適用して平均気温分布を推定した。新潟県では概ね8月から9月にかけて、登熟期を迎えるので、データの統計は8月と9月を月別に統計した。平均気温は毎日積算するが衛星データは雲などの影響により欠損するのでAMeDASの観測データにより補完した。長岡市にある新潟県農業総合研究所では出穂期が8月2日であり、収穫期が9月13日であった。そこで長岡市周辺の出穂期を8月2日として8月3日から日平均気温を積算した。衛星データを使用した場合と、AMeDASデータのみを使用した場合とでは両方とも9月12日時点で1000℃を越えて、実際よりも1日早く収穫期を迎える結果となった。