中源 俊朗

衛星データと数値地形解析による崩壊斜面特性の把握

力丸 厚、向井幸男

日本は変化に富んだ気候と活発な地殻変動や火山活動などにより多種多様な地形が分布している。新潟県信濃川支流である魚野川流域においては土砂災害や洪水を発生しやすい重荒廃地として指定されている地帯が日本国内計14箇所のうちの2箇所も分布しており、またその源流もほとんどが荒廃地となっている。平成16年10月23日に新潟・福島集中豪雨、同年10月23日に新潟県中越地震の発生により、斜面崩壊や道路の損壊、河道閉鎖など多大なる被害を受けた。自然災害による被害を少しでも軽減するために、広域的かつ継続的な危険地域の観測・把握・推測が求められている。
本研究では新潟県山古志地区を対象領域として衛星データから崩壊斜面特性を広域把握することを目的とした。まず、斜面崩壊箇所を抽出するために既存の崩壊データから傾斜勾配の高い箇所だけに絞り込み、その中から比較的規模の大きいエリアを6つ選定した。各エリアにおいてDEMから算出した地形特徴データ、東西南北の4方向の傾斜角・地形浸食量・地形凹凸量を使用して地形の類似度を標準化ユークリッド距離により算出を行った。また各類似度データを用いて最大類似度合成を行ない、標準偏差から決定したしきい値を用いて選定した崩壊斜面箇所に対する類似地形箇所を抽出した。
山古志地区の地層は比較的若い地層が多く分布しており、中越地震により崩壊した斜面のほとんどは先天降雨が大きく影響した粘土層の上に堆積している砂層、シルト層であった。そのため、土壌水分量との関連が示唆される地表面温度とその地表面温度との関係の高い植生被覆密度を2時期のLANDSAT画像からそれぞれ抽出した。温度画像においては地形条件によって太陽熱の影響を受けやすい地形と影響を受けにくい地形を考慮するためにDEMからを算出した6つの地形特徴データを使用して地形分類を行い、その結果を用いて地形条件を考慮した熱画像を作成した。この画像より低温度領域および高温度領域を画像上にて把握した。それぞれ算出した熱画像と植生被覆密度とを崩壊斜面類似地形内においてカラー合成を行い、地表面温度と植生被覆密度の分布の兼ね合いから、湿潤地帯による危険区域と乾燥地帯による危険区域の把握を行なうことにより崩壊斜面特性の把握を行った。
本研究から、既存の崩壊斜面からの地形特徴を抽出することにより、広域的な崩壊危険地域を把握することの可能性が示唆された。