川初 倫大

航空機ハイパースペクトルデータを用いた森林分光反射変動特性の把握に関する研究

力丸 厚助教授  向井 幸男教授

森林資源、森林の生育状態を把握する技術の開発需要は、森林保全目的を主体として世界的に高い。本研究では航空機搭載ハイパースペクトルセンサデータを用いて、森林内の分光反射変動特性の解析手法を検討し、森林内の分光特性の変動を把握することを目的としている。テストサイトは新潟県三島郡越路町来迎寺周辺の森林で解析対象樹木はスギとした。
樹木の分光反射特性の解析は分光反射率が急激に変化する680nmから750nmに注目して行われる。680nmから750nmの波長帯にはレッドエッジと呼ばれる波長がある。レッドエッジは分光反射率を一次微分し、その最大変化率を示す波長である。このレッドエッジは植物が環境ストレスを受けることで緑葉内のクロロフィルの生育が妨げられた場合、短波長側にシフトするブルーシフトが起こると言われおり、室内におけるスペクトルメータを用いた研究ではブルーシフトが起こることが確認されている。しかしスペクトルメータでの観測は観測対象が限られ、空間的な把握は困難である。本研究では森林の分光反射変動特性の解析を行う上で、レッドエッジに注目し航空機ハイパースペクトルデータを用いて解析を試みた。

 本研究で使用した航空機ハイパースペクトルデータは、大気の影響を鋭敏に受け、データに大気のノイズを含んでいる。そのため、大気のノイズを低減しなければ詳細な分光反射特性を把握することが難しい。そこで、観測画像内に分光特性の安定し、被覆が均一な分布をした分光較正用の地上反射基準体を設定し、正規化を大気の低減処理を行った。本研究ではこの地上反射基準体をアスファルト被覆領域とし、地上反射基準体を用いた大気影響の低減手法を検討した。
その結果、地上反射基準体を用いた正規化により、大気の影響を低減できることが確認できた。また、大気の影響を低減したことで反射率画像へと変換が可能となり、航空機ハイパースペクトルデータからレッドエッジの検出が行えるようになった。また、テストサイトを観測した3時期の画像より、樹木画素サンプルをとり、レッドエッジの時期的変化を調べた結果、この3時期間でレッドエッジのシフトを確認することができた。 
さらに、レッドエッジが現れる波長を面的に把握するために、レッドエッジが現れる波長を色分けし、レッドエッジの空間分布画像を作成し、レッドエッジの時期的な変化を空間的に把握することが可能となった。