水稲の植被率および分光特性による生育最適化の検討

遠藤 昌宏

力丸 厚助教授  向井 幸男教授

稲作農業においては,米の品質維持,収量安定とともに,稲作の効率化,省力化を目的とした研究が進められている。稲作では,水稲の生育初期の状態が,その後の生育へ与える影響が大きいことから,早期段階で水稲の生育を診断する事が好ましいとされている。
現地で行う生育調査は,水稲の細部まで調査する事ができ,早期段階における生育診断に有効である。しかしながら,現地で行う生育調査では時間がかかってしまうため,広範囲に分布している水田の全圃場を診断する事が困難である。そのため,広範囲の情報が取得できるリモートセンシング技術を利用した生育情報の把握が注目されている。
こうした背景から,全国的に,リモートセンシング技術を利用した研究やシステム開発が増加してきている。そして,近年は,全国的にお米の食味が向上してきているため,市場で高い評価を受けている新潟県産のコシヒカリは,他県米との品質差がなくなりつつある。そのため,米どころで知られている新潟県も,例外なく稲作に関する研究や新技術の導入に力を入れている。そこで,高性能な水稲品質管理システムの構築が求められている。
リモートセンシング技術を用いて,観測対象物との対応を明らかにするためには,リモートセンシングによるデータの取得以外に,現地の様子を地上観測にて把握する必要がある。そこで,本研究では,リモートセンシングによって取得したデータと,水稲との関係を明らかにするため,地上から圃場の様子を観測した。
本研究の目的は,地上計測により算出した水稲の植被率,水稲の分光反射特性の経時変化と,現在の稲作で適用されている生育量調査によるデータ,そして,実際に水稲の生育に関わっている要因との関係を解析し,稲作の管理を省力化するための手法を考案することである。
地上計測と生育量調査との検討の結果、コシヒカリの出穂までの植被率と稲体窒素量の高い相関が認められた。
これまでに、RADASATと出穂までの植被率には、相関が認められているので、RADASATによる稲体窒素量の推定が可能であると考えられる。RADASATは、天候の影響を受けづらいため、梅雨におけるデータの取得が容易である。そのため、梅雨に追肥診断をする新潟の稲作では、RADASATによる稲体窒素量の推定は、利便性に優れているといえる。
本研究の結果は、リモートセンシングデータへ適用の可能性が示唆している。本研究の結果を参考にすることで、広範囲かつ全天候型の稲体窒素量推定システムを開発することができる可能性を見出せた。