土井 洋典

寒冷乾燥地域に適応可能な土壌水・熱輸送モデルの開発について

陸旻皎

人類にとって、人口の爆発的な増加が予想される21世紀にむけて水不足を解消することは重要な課題である。しかし、地球上の水資源の総量は決まっており、そのなかでも人間が利用できる水は限られているため、地球上の水がどのように循環しているのかを知り、水資源を有効利用する必要がある。
特に砂漠化が進行している乾燥地域においては水資源の不足が顕著であり、水循環の把握が必要とされている。アジア北部に位置するモンゴルでは、急激な社会体制の変化により、砂漠化が深刻であり、1994‐1999年で日本の7分の1に相当する面積が砂漠化したという報告があるほどである。また、この地域においては永久凍土および季節凍土が存在しており、これらの凍土地帯における土壌の凍結・融解過程はアジアモンスーンや地球の気候システムに大きな影響を与えているといわれる。そこで、本研究ではモンゴルにおいて土壌中の熱・水輸送過程および土壌水の凍結・融解過程を明らかにするため、寒冷乾燥地域に適応可能な土壌水・熱輸送モデルの開発を行った。本モデルは三つの特徴をもっている、第一の特徴は土壌水の凍結・融解過程を表現するため、計算ステップ毎に土壌水を融解・凍結させるフラックスであるPLH(Potential Latent Heat)の概念を取り入れ、温度変化に応じて部分凍結(融解)および完全凍結(融解)を表現する手法を用いたことである。第二の特徴は他モデルとのカップリングを考え、土壌層を任意の厚さに分割できるモデルである。これにより、計算負荷を減らすことや、詳細な計算を行うことができ、他のモデルとカップリングする場合に目的に応じて土壌層の層数を変更することができる。第三の特徴は土壌中の熱輸送に大きく関わる熱伝導率を求めるために、熱伝導率の計算式であるDeVries式にForce‐Restore法によって決定した重み係数を与える手法を用いていることである。また、本研究では検証として、2003年の夏季・秋季および2004年夏季において解析を行い、地温および土壌の体積含水率の時系列変化をモデルの計算値と観測値を比較することにより検証を行った。その結果、計算値が観測値を表現することができ、本モデルによって土壌における熱・水輸送が表現できることがわかった。