佐藤健太

ダム調節を含んだ上下流一貫の分布型水文モデルの開発に関する研究

陸旻皎

全国には3,000を超えるダムがある。その設置目的は農業用水、下水道、工業用水、発電、あるいは洪水防御など様々であるがその用途が何であってもその管理は安全かつ適切に行われなければならない。貯水池管理において緊急性が要求されるものに洪水時の対応がある。この場合、下流に対する安全性の観点から、関係機関への通報ならびに一般への周知が求められており、細心の注意を払って管理がなされているが、ダムによっては時代の変遷にともない、より多くのことが要求されることも予想される。こうしたことに対処するためには、学術的にも裏付けられた洪水予測手法を導く必要がある。現状で洪水予測は経験に頼っているダムが多いようであるが、より合理的に問題に対処するためには流出モデルを利用することが必要である。河川流量予測の重要性は洪水予測にとどまるものではない。平時の河川流量予測もまた利水管理の上で重要である。流量予測に流出モデルを利用することの重要性、合理性がここに見いだされる。このためには流域の水収支の把握が重要であって、流域の蒸発散量の合理的な推定が肝要である。また雪は重要な水資源となってくる。その反面、雪は融雪出水などによる災害の要因にもなっている。このような雪の有効利用・防災は非常に重要な課題だと考えられる。しかし、豪雪地域や山岳地域の降雪・積雪特性を把握することは非常に困難なことである。したがってモデルによる再現・予測の必要性が高いと言える。
本研究の目的はダムを含んだ流域で、ダム操作を組み込んだ上下流一貫した分布型融雪流出モデル作成し、流出解析を行うことにある。分布型融雪流出モデルを用いることにより流域内の水の挙動を考慮したダム操作を実現すること、対象流域の水資源量を把握することを目的とする。
研究結果として、分布型モデルで用いる擬河道網を作成し、ダム調節を含んだ上下流一貫の分布型融雪流出モデルを作成した。作成したモデルによって、三国川流域を対象にパラメータ選定を行い、モデルに地熱による影響を考慮した。三国川流域において水資源量に関する諸量を推定した。本研究の分布型融雪流出モデルでは流域全体を考慮することができるので、例えば、ダム下流の状況を考慮したダム管理が可能であり、その他に様々なダム管理を考慮することが可能である。