保坂 信克

下水汚泥焼却灰を用いたコンクリートの配合設計方法に関する一考察

指導教官:丸山 久一


 近年,下水道整備の進展および処理施設の高度化に伴い,下水汚泥の発生量は年々増加傾向にある。現在のところ,これらの大部分は減量化・無害化処理を行った後,埋立て処分されているが,最終処分場の逼迫や,新規処分場の建設が社会的風潮から困難であることから,近い将来,処分場不足や処理費用の高騰が懸念される。このため,最終処分場への負担軽減や環境への配慮を前提とした廃棄物の発生抑制,減量化,再資源化への取組みは必要不可欠であり,特に下水汚泥は,今後も発生量の増加が予想されることから,その有効利用技術の開発が急務となっている。

 このような現状を踏まえて本研究では,下水汚泥の有効利用の一環として,下水汚泥を焼却処理した後の残渣である下水汚泥焼却灰を可能な限り多量にコンクリート材料として用いるための配合設計上の問題点について検討した。下水汚泥焼却灰は,粒子形状が多孔質で水を多量に吸収するといった性格を有しているため,コンクリート材料として用いた場合,フレッシュ性状と硬化特性を定量的に管理することが難しく,その評価方法を開発することが重要な課題となっている。そこで本研究では,混和剤の添加量を主体として,施工性および圧縮強度を配合面から定量的に評価する方法を検討することにした。

 下水汚泥焼却灰をコンクリート材料として用いた場合,下水汚泥焼却灰の混入量が大きくなるに従って,所定のスランプを得るために必要な高性能AE減水剤の添加量は増加することが明らかとなった。これは,コンクリート中の粉体量の増加によって,粉体間および粉体に拘束される水が増大し,高性能AE減水剤の分散効果を十分に発揮できなかったことが原因であると考えられる。下水汚泥焼却灰混入量が増加するに従って,所定のスランプを得るために必要な単位水量は増加するため,圧縮強度が低下する。しかしながら,下水汚泥焼却灰混入コンクリートは,水セメント比が同一ならば,下水汚泥焼却灰混入量や高性能AE減水剤添加量が異なる配合でも,同程度の強度を得られることが確認された。したがって,下水汚泥焼却灰混入コンクリートの圧縮強度は,下水汚泥焼却灰や高性能AE減水剤の混入量に関係なく,セメント水比によって概ね予測できると考えられる。

 以上の結果から,下水汚泥焼却灰混入量および混和剤添加量を選定することによって,スランプおよび圧縮強度を定量的にコントロールできると考えられる。