趙 玉国

アラミド短繊維混入によるコンクリートの曲げじん性向上効果

指導教官 下村 匠


 近年、トンネルや高架橋などの構造物において、コンクリート片の剥落が発生し、コンクリート構造物の耐久性が問題となっている。コンクリート構造物片の剥落を防ぐ技術として繊維補強コンクリートのコンクリート構造物への適用が注目されている。しかし,繊維補強コンクリートは普通コンクリートに比べ、施工性が劣るため,一般には利用しにくい。また、技術基準、合理的な設計手法は確立されていないので、多数存在する繊維材の中から最適な材料を選定することが難しいのが現状である。
現在よく使われている鋼繊維は強度が高い反面、防錆性の面で問題があり、更に、鋼繊維補強コンクリートを廃棄する際、鋼繊維の腐食が影響して、処理が困難になるという問題が発生する。これに比べて、合成繊維は腐食しなくて、軽量で取り扱いが容易であるため、鋼繊維に代わる材料として、注目を集めている。

 アラミド繊維は吸水率が高いため、コンクリートに混入すると、スランプが低下する。本研究では修正手段として高性能AE減水剤のみを使用して、アラミド短繊維混入コンクリートの配合を検討した。曲げじん性向上効果について、アラミド、ビニロン、鋼繊維を混入したコンクリート供試体を用いて、4点曲げ試験を行い、曲げじん性に及ぼす繊維混入の影響を検討した。
4点曲げ試験を行った時,混入率の低い場合、最大荷重点以降は急激に破壊進行し、不安定な破壊を起こし、曲げじん性係数を算出する時、荷重―変位曲線においては、その部分のデータの信頼性が欠けると思われる。また、たわみ2mmまでの曲線に囲まれた面積がほぼ同じで、曲げじん性係数の差が小さいため、曲げじん性係数をパラメータとして、繊維補強効果を評価するのが難しいと思われる。
繊維混入コンクリートの曲げ供試体の荷重−変位曲線は,プレーンコンクリートの性質に依存する部分と,繊維に依存する部分よりなると考えられる。既往の方法による曲げじん性の計算値には二つの部分が含まれている。コンクリート片の剥落防止に使う繊維補強コンクリートは一般的に繊維の混入率が低いため、プレーンコンクリートの性質に依存する部分が大きい。そのため、その二つの部分を分離して評価しないと、4点曲げ試験により繊維補強効果のみを評価するのが難しい。本研究では、その二つの部分を分離して、繊維に依存する部分の面積によって、曲げじん性を評価する方法を提案した。この評価方法は急激な荷重低下の影響が避けられる。繊維混入率が低い場合、より正確に繊維補強効果が評価できる。