清水 淳

複合構成モデルを用いたコンクリート部材の乾燥収縮応力解析法の拡張

指導教官 下村 匠

本研究では,小幡の提案した骨材とセメントペーストの複合構成モデルを生かし,正確に収縮・クリープ現象およびひび割れ発生条件を表現するため,青木の行った持続一軸引張供試体および一軸拘束供試体を小幡の手法で解析し,実験結果と比較することで,部材断面応力の予測精度,改善点,およびひび割れ発生条件をどう取り入れるかについて検討した.また, 青木により提案された引張変形特性およびひび割れ発生条件の実験式は角柱型において適用可能であるとされているが,他の形状では検証されていない.そこで,円筒型拘束収縮試験および円筒型自由収縮試験を行い,青木の実験式で円筒型拘束収縮供試体を解析し,実験での挙動と比較することで表現可能かどうかを検討した.
持続引張供試体および一軸拘束供試体を小幡の解析法で解析し,解析結果と実験結果を比較することで,どの程度乾燥クリープおよび基本クリープが表現できるかについて検討した.その結果,@封緘状態で載荷した場合,解析結果では基本クリープの影響が全く表現されず剛性は低下しない.A載荷前に乾燥させ,載荷速度を早くした場合,解析結果では大幅に剛性が低下しており,乾燥クリープの影響を過大に評価しているといえる.Bひび割れ発生条件に関しては,解が求められなくなった時点の応力が,実験でのひび割れ発生応力に近いことから,その時点の応力をひび割れ発生応力と考えられることができる.Cひび割れ発生応力は,実験結果と解析結果ともに乾燥初期で20%程度減少している.実験では乾燥初期以降の低下は見られなかったが,解析結果では,乾燥時間の経過にともないわずかだが低下しおり,長期間でみると30%程度低下すると予想される.D一軸拘束供試体の場合,一軸引張供試体よりも載荷速度が遅いため,破壊までに時間がかかり,基本クリープの影響は大きくなる.基本クリープを考慮していない解析結果は実験結果より剛性が大きくなる.また,ひび割れ応力に関しては,実験結果で20%,解析結果で30%の低下となり,解析は実験結果より10%程度弱く評価してしまうことが示された.
円筒型拘束収縮試験および円筒型自由収縮試験を行った結果,自由収縮ひずみを乾燥周長断面積比で比較すると,値の大きいものほど自由収縮ひずみが大きくなる傾向はあるが,円筒型と角柱型では,同じ乾燥周長断面積比であっても自由収縮ひずみの挙動は異なる.青木の実験式で円筒型拘束供試体を解析すると,解析結果と実験結果の弾性係数の低下率に違いが見られた.角柱とは異なる形状の供試体では,乾燥周長断面積比で弾性係数の挙動を表現するのは難しいと考えられる.