氏名 安藤真介

論文題目 繊維補強発泡ウレタン廃材を用いた受圧板の耐荷性状

指導教官 丸山久一


 繊維補強発泡ウレタン(以下FFU)とは、熱硬化性樹脂発泡体をガラス長繊維で強化した材料である。現在、FFUの加工工程などで発生する廃材(以下FFU廃材)の多くが焼却され、熱エネルギーとして利用されている。本研究では、発生したFFU廃材をグランドアンカー用の受圧板として用いることを検討するため、実物大の試験体を使用した載荷試験を行い、その耐荷性状について評価を行った。特に、受圧板の製品高さ、および受圧板下面に接着したFRP補強量を主要な検討要因とし、それらが受圧板の耐荷性状に及ぼす影響を考察し、使用上の問題点や作製条件などについて検討した。
実地盤と近い状態にすることを目的に行ったマット支持での載荷においては、受圧板底面の圧力分布は、比較的一様なものであったが、載荷試験において測定された変位は、受圧板端部に比べて中心部の方が大きくなる傾向が見られた。これは、現在実用化されているFFU製受圧板(従来品)と同程度の変位であることから、実地盤での使用に問題はないと考えられる。また、マット支持載荷における荷重−変位曲線が非線形な挙動を示したが、これはマットの荷重−変位曲線が、受圧板の載荷試験結果と同様、非線形な形状であることから、マットの性質に起因するものと考えられる。
四辺支持での載荷において、FFUリサイクル受圧板は、従来品に比べぜい性的な破壊をすることが確認された。しかしながら、載荷試験において最大耐力は、両者とも設計アンカー力(500kN)の2倍程度であることに加え、実施工においても、設計アンカー力程度の荷重までしかかからないことから、ぜい性的な破壊に関しては問題にならないと考えられる。
また、製品高さおよび下面FRP補強量の増加により、最大耐力が向上することが確認された。さらに最大耐力の向上には、材料コストのかかる下面FRP補強量の増加よりも、製品高さの増加の方がより効果的であることが明らかとなった。加えて、FFUリサイクル受圧板の重量はFFU製受圧板に比べ大きいものの、従来のコンクリート製受圧板の半分程度であることから、現場でのワーカビリティーは、十分に改善できると考えられる。
最終的には、製品高さが175(mm)以上で、下面FRPがチョップストランドマット(M)とロービングクロス(R)の5層構造(MRMRM)であれば、従来品と同等の最大耐力を持つと考えられ、実際の使用は可能であると結論した。