小黒 桂介

プレートガーダーの終局限界状態設計のための部分安全係数,強度式の比較考察

長井 正嗣,岩崎 英治

現在,(社)日本道路協会の発行する道路橋示方書による鋼橋の設計は許容応力度設計法に基づいている. 2002年になって性能照査規定,つまり要求性能を自由な形で保障する照査手法が導入されたが,実質的にはこれまでとほとんど変化はない.そして現在,複数の限界状態を照査する限界状態設計法,その具体的な照査方法として複数の部分安全係数を含む荷重抵抗係数設計法の導入検討が開始され,5年後の完成を目指している.
本研究では,連続合成桁の終局限界状態を対象とした設計フォーマットを提案する.連続合成桁に着目するのは,近年,公共事業コスト縮減要請のなかで,この形式が経済的なタイプとして認識が高まり,急速に復活し,建設が増大する状況にあるためである.また,連続合成桁を対象とした限界状態設計用のフォーマットが数少ないという状況にあるためである.
さて,これまで30年間,プレートガーダーの曲げ,せん断強度について,数多くの研究成果が公表されているものの,まったく実務に適用されていない.本研究では,これまでの提案公式を用い,強度の大小関係を明らかにする.最後に,部分安全係数,とくに荷重係数を複数仮定し,また種々の強度式を用いることで,どの程度の差異が生じるものかを明らかにし,今後の部分安全係数の設定や強度式の設定のための一資料とする.

本研究で得られた結果を要約すると以下のようになる.

(1) 曲げ強度の評価に当り,現行道示,三上式,学会設計指針PART-Aを用いた数値の比較を行ったが,3者で大きな差異は生じなかった.

(2) 三上式は腹板の曲げ強度を考慮した桁全体の強度評価式で,他の2つの方法は腹板の曲げ強度について別途照査が必要となる.将来的には,三上式のような桁全体としての強度を評価できる手法が好ましいと考える.

(3) 荷重係数(部分安全係数)を死荷重,活荷重用に分離し,例えば,死荷重に対する荷重係数を1.1とすれば,活荷重の荷重係数として2.5を考慮しても,現行に比べて断面の小型化が可能となる.

(4) 死荷重に対する荷重係数を1.3とした場合,活荷重に対する係数が2.5の場合で,現行設計よりほぼ同じ断面設計となる.活荷重に対する荷重係数を2.0にすると,(S/R)が0.85〜0.9となり更に断面の小型化が可能となる.

(5) 断面決定には,提案されている強度評価の差異の影響より,荷重係数の設定の影響が大きい.