高橋 拓也

新潟県の耐候性鋼橋梁に及ぼす飛来塩分の影響に関する研究

長井 正嗣 岩崎 英治

耐候性鋼材とは,普通鋼に比べ耐食性に優れた,添加元素(Cu,Cr,Ni,Mo,P等)が数%以下であるような低合金鋼で,鋼材表面に緻密な「安定化さび」と呼ばれるさび層が形成される.このさび層は水や酸素の透過を防ぎ,腐食作用を抑制する働きを持つ.普通鋼でもさび層がある厚さ以上に成長すると腐食速度は緩慢になるが,耐候性鋼材はそれ以上に腐食を抑制し,塗装を施さなくても使用することができる.そのため,鋼橋のライフサイクルコストを押し上げる大きな要因となっている塗装を施さずに使用することができる.
安定化さび層の形成には飛来塩分量が最も関係しており,新潟県内では離岸距離が20km以内の地域では飛来塩分量を計測しその値が0.05mdd(mg/du/day)以下でなければ耐候性鋼材を無塗装で用いることはできない.しかし,計測には1年以上の期間を有するため,実際には計測せずに近隣の耐候性鋼橋梁のパフォーマンスからその適否を判断する場合が多い.したがって,耐候性鋼橋梁の実態を調査し,さび状態や周辺環境を把握することは今後の耐候性鋼橋梁設計計画の際に極めて有益であると言える.
本研究では新潟県内の周辺環境が異なる6箇所において飛来塩分測定を行い,離岸距離,周辺環境の違いによる飛来塩分量について検討した.そして,その位置での耐候性鋼橋梁の付着塩分量測定を行い,飛来塩分は橋梁にどのように付着しているのか検討した.また,離岸距離が20km以内にある新潟県内の既設耐候性橋梁79橋を対象にさび厚量測定を行った.

その結果,以下のことが得られた.
(1)塩分は冬季間に多く飛来しており,離岸距離だけでなく,地形の影響を強く受けており,累積して橋梁に付着していないこと.
(2)雨水や結露による洗い流しの少ない部位での付着塩分量と飛来塩分量には相関が見られる.
(3)新潟県内の裸仕様橋梁は経過年数とさび厚量には相関があり,離岸距離が20km以内であってもさび状態は良好である.
(4)表面処理仕様橋梁はさび層形成段階であり,離岸距離と年間さび厚増加量に相関が見られる.また,年間さび厚増加量と飛来塩分量には相関が見られる.