高田 晃子

形鋼多主I桁橋の立体挙動の解明に関する研究

長井 正嗣,岩崎 英治


近年,橋梁建設コストの削減に向けた取り組みが各機関で活発に行われている.とくに,日本道路公団(JH)を中心として,従来の橋構造をシンプル化し,かつ鋼桁とコンクリート床版を合成させた合成構造の復活によるコストダウン対策が行われている.具体的には,主桁本数を最少2本とし,中間横方向補剛材(横桁,対傾構,横構)を小型の横桁のみとした,あるいは省略した合成2主桁橋の建設例が増加しつつある.

さて,合成2主桁橋はスパンが30m〜80mの範囲で経済性が発揮できるとされ,PC橋とともに多用されている.一方,スパンが30m以下になると,PC橋梁が経済的であるとされ多用されている.例えば,スパン30m以下の市場に目を向けると,90%がPC橋梁であり,10%が鋼系橋梁という状況にある.したがって,このスパン領域においても,より経済的な鋼系橋梁を提供することは公共事業費の縮減を達成する上でも極めて重要である.
以上のような状況より,本研究では,スパン30m以下の領域での競争力のある鋼系橋梁として,製鉄所で製造される形鋼を主桁とし,主桁間に中間横桁をまったく設けないシンプル化した合成桁橋を提案する.このような取り組みは,海外では実例があるものの,我が国では実績がなく,その挙動について十分調査検討しておく必要がある.とくに,荷重分配が床版によってなされることから,床版に対して,設計では考えていない余分な負荷を与えていないかを明らかにする必要がある.あわせて,床版の荷重分配を再現する格子モデルの構築が必要となる.本研究では試設計したスパン15m,25mの橋モデルを対象に3次元FEM立体解析により鉛直荷重作用下での種々の挙動を明らかにし,本形式が実用に十分供することを明らかにする.

本研究で得られた主要な成果を要約すると次のようになる.
(1)荷重分配性能に与える中間横桁の効果は極めて小さい.
(2)T荷重による床版の主鉄筋及び配力筋方向曲げモーメントに与える中間横桁の影響は極めて小さく,また,設計にあたり,現行道路橋示方書で得られる値は多小安全側で利用できる.
(3)L荷重載荷時の荷重分配に関与する主鉄筋方向の床版曲げモーメントは小さい.
(4)中間横桁の無いモデルの2次応力(主桁の下フランジ面内応力や腹板曲げ応力)は極めて小さく,横桁がある場合に比べてスムーズな分布を示す.
(5)床版の荷重分配効果を表す格子モデルを検討したが,高い精度を得るためには,主桁のねじれ剛性を考慮する必要があると考えられる.