廣崎 大史

岩盤不連続面の幾何形状によるせん断強度特性

大塚 悟

[1]本研究の目的
岩盤内に存在する不連続面の力学的挙動は,岩盤構造物の全体安定性に大きな影響を及ぼす.しかし,不連続面のせん断強度は垂直応力に依存して非線形なことが報告されており,低拘束圧にて不連続面のラフネスの影響を強く受けることが知られている.これまでに不連続面の実験公式は多数提案されているが,(1)実験式の理論的背景が不明である,(2)ラフネスの計測方法に客観性がなく観察者の主観に影響される,などの問題がある.本研究はこれらの問題点に対して不連続面形状とせん断強度特性間の関係を明らかにするとともに,客観的な不連続面のせん断強度モデルを提案するものである.また,岩盤の設計において岩級分類による方法が良く用いられていることに着目して,異なる岩種・岩級の地盤における掘削面のアスペリティ形状の計測データを収集し,不連続面のラフネスと岩種・岩級間の関係について分析を行った.
[2]本研究の特徴
本研究は岩盤不連続面のラフネスを客観的に計測するために,Rengersの提案する整理手法を用いて不連続面のラフネスを定量化する.この方法によると任意の試験長に対する最大粗度角が求められる.得られた最大粗度角は不連続面のせん断に伴うダイレイションに関連すること,および試験長がアスペリティのせん断に伴う見かけ上の粘着力に対応すること,を利用してせん断強度モデルを提案した.せん断強度モデルはラフネスに着目した極限解析との比較によって検証した.
また,岩盤不連続面は岩盤内に存在するためにラフネスを実際に測定することは現実的でない.本研究では不連続面のラフネスを岩種・岩級によって予測する方法を検討するために岩盤掘削面でのラフネスを分析し,岩種・岩級との関係について調査した.
[3]結論
@不連続面のラフネスを考慮してせん断強度の極限解析を実施した.岩石が摩擦性材料である場合のせん断強度特性をシミュレーションした結果,せん断試験で得られているこれまでの知見と良く一致した.
ARengersの最大粗度角を用いたせん断強度推定モデルは極限解析と良く一致した.これより提案モデルの妥当性を岩石が摩擦性材料である場合に対して確認した.
Bラフネスに起因する岩盤不連続面の強度異方性について検討を行ったが,アスペリティが不規則な形状の場合は強度異方性が発現しないことを明らかにした.
C実岩盤掘削面の測定データをRengers曲線を用いて形状分析を行った.限られた事例であるが,Rengers曲線は岩級のせん断抵抗角を用いて正規化すると基準化できることを明らかにした.これにより,岩級によるラフネスの予測可能性が示された.