玉尾 由享

気泡混合軽量土の局所的物理特性に関する研究

海野 隆哉

気泡混合軽量土は盛土荷重の軽減による地盤沈下の抑制、擁壁などに作用する土圧の軽減などに効果のある改良土として、近年施工事例が増えている。現在、気泡混合軽量土の設計や施工管理には一軸圧縮強さが用いられているが、一軸圧縮試験を行うと土とは異なる力学挙動や破壊形式を示すことから、正確な一軸圧縮強さを評価するには問題がある。この原因の一つに、供試体内の要素性が失われたことによる弱部の存在が考えられた。そこで本研究では、硬化後の軽量土供試体の物理的特性が軽量土特有の力学挙動・破壊形式に与える要因を求めることを目的とし、供試体に対して各種物理試験および力学試験を行い、検討を行った。
目標密度を0.68t/m3、目標空気量を57.8%、水セメント比を1.65とした配合を基本配合として、水セメント比(W/C)を変化させた配合4ケースと空気量(Air)を変化させた配合4ケースの計9ケースについて一軸圧縮試験を行った。なお軽量土供試体の採取位置は容器の下端から12.5cmの位置とした。試験の結果、単位体積重量の小さな軽量土供試体(基本配合、W/C大、Air大)の下部において局部的な圧縮破壊を生じた。局部圧縮破壊の発生は、供試体内に弱部が存在していることを意味しており、供試体の要素性が失われていると考えられる。
軽量土の一軸圧縮強さは密度に依存すると言われていることから、単位体積重量の小さな軽量土で生じる圧縮破壊も密度の小さな部位で破壊が生じているのではないかと考え、供試体内の鉛直方向の湿潤密度分布を調べることとした。しかし試験の結果から、基本配合で作製した軽量土では湿潤密度が全断面においてほぼ一定の値を示すことがわかった。すなわち供試体内の弱部を湿潤密度の分布から推測することはできないのである。この時、湿潤密度分布の測定と同時に供試体内の含水比分布の測定も行った。その結果、軽量土下部のものほど含水比が高くなる傾向が見られた。本研究で用いた配合は、粘土と固化材の重量比が1:1であることから、含水比が大きくなることは、水セメント比が大きくなることと考えることができるため、供試体上部に比べて下部が弱部となることが伺える。
以上の結果より、単位体積重量の小さな軽量土供試体は下部に弱部が存在することがわかったことから、供試体の採取位置を高くして同様の実験を行った。その結果、一軸圧縮試験ではせん断や割裂の破壊形式が見られ、一軸圧縮強さも基本配合の1.11〜1.43倍になった。さらに含水比も基本配合とは異なり下部での急激な上昇は見られなかった。
以上のことから含水比の分布より破壊形式が分類でき、これを除くことでより適切な一軸圧縮強さの評価ができると考えられる。