松本卓也

孔内ねじりせん断試験の不飽和土への適用性に関する研究

豊田浩史

孔内ねじりせん断試験装置は、実地盤(ボーリング孔内・サンプリングを含む)を試験し評価することを目的としている。特に斜面の原位置強度を精度よく求め,斜面の安定性を評価するための一手法となりうると考えている。最近では、不攪乱サンプリング試料を、室内で試験する方法も用いられている。原位置での試験では、孔底の成形や、機器の設置など様々な問題がある。室内で試験する事で、せん断面を確認する事ができ、せん断刃が正しく刺さっているかなど細かな試験状態を把握することができる。孔内ねじりせん断試験のせん断機構に関するこれまでの研究により、乾燥砂や飽和正規圧密粘土については定体積・定圧試験を行えることが確認されている。
本研究の目的は、不飽和土や不攪乱土をはじめとする、やや硬質な地盤においても孔内ねじりせん断試験でピーク強度・残留強度の測定が可能であるかを、リングせん断試験結果と比較することで検討した。これまでの検討結果を基に、原位置試料について試験を行い、三種類の強度(ピーク強度、軟化強度、残留強度)を求めることが出来た。

 供試体は静的締固め法により作製した。用いた試料は米山粘性土である。供試体作製条件として、要素試験で求められた不飽和土の圧密曲線から、圧密圧力によらず含水比は一定、サクションによらず間隙比は一定であることが分かった。よって、含水比を27%(s=200kPaに相当)と、それより5%低い 22%に決定した。間隙比は、拘束圧50kPaのとき0.98、100kPaのとき0.94、200kPaのとき0.84に調整した。この条件で、孔内ねじりせん断試験とリングせん断試験を行った。

 また、原位置サンプリング試料を用いて、不攪乱試験、水浸試験、再構成試験、残留試験を行いそれぞれの強度定数を求めた。

 本研究で得られた知見を以下に示す。
@ 飽和土、不飽和土に対するピーク(最大)強度と残留(最小)強度は、リングせん断試験と等価な試験結果が得られた。
A 含水比と間隙比を調整した不飽和土の破壊線は、従来の飽和土の破壊規準同様に、飽和土の破壊線を平行移動させたものになることが確認できた。
B 不飽和土の残留状態におけるせん断抵抗角は、含水比が大きい飽和土と等しく、含水比が小さいとせん断抵抗角は大きくなる。
C 不飽和土の残留状態における粘着力は、含水比によらずゼロになる。
D 孔内ねじりせん断試験において、不攪乱試料のピーク強度・軟化強度・残留強度を測定することができる。
E 孔内ねじりせん断試験を用いて、柔らかい試料から硬い試料(N値=25)まで、地盤調査を行うことが可能である。