山田 文則

海岸近傍の飛来塩分の発生・輸送に関する数値モデルの開発

細山田 得三

海岸近傍の塩害は,海水面から発生した飛来塩分が大気中へ取り込まれ,風により輸送されることによって生じる.そのため,波動場での飛来塩分の発生過程,および空中における飛来塩分の輸送過程の解明が急がれる.また,塩害は,飛来塩分が構造物に付着することによって生じるが,その詳細な付着過程は明らかにされていない.そこで,本研究では,飛来塩分の発生・輸送過程について明らかにするために実地観測および数値解析を行い,その結果について検討を行った.さらに,飛来塩分の構造物への付着過程について検討を行った.

 本研究において,大量に飛来塩分が発生していると考えられる新潟県の沿岸域で飛来塩分分布の測定を行い,気象・海象条件,地形および海洋構造物と飛来塩分量の関連を求めた.また,波動場,飛来塩分の発生・輸送および風の場の計算モデルを結合することにより,飛来塩分の発生から輸送までを一貫した数値モデルの開発を行った.さらに,飛来塩分の構造物の付着過程を明らかにするために,新潟県中越地方の大崎海岸で実地観測を行い,風向きと構造物に付着する飛来塩分分布の関連を求めた.および,実地観測で用いた構造物を想定した数値解析を行った.

 実地観測の結果より,飛来塩分の発生・輸送過程は,風速などの気象条件だけでなく,海象条件,地形および海洋構造物にも影響を受けることが明らかになった.日本海沿岸域では,冬季の厳しい気象・海象条件により,大量の飛来塩分が発生・輸送されていることが明らかになった.
数値計算の結果より,砕波帯で飛来塩分を発生させることにより,実地観測とほぼ同様の結果を得ることができた.数値モデルにより,波動場での飛来塩分の発生過程,および空中での飛来塩分の輸送過程を明らかにすることができた.
飛来塩分の構造物への付着過程に関する実地観測および数値計算から,構造物に付着する塩分量は,大気中に飛来している塩分量の5〜20%程度であること.付着する飛来塩分は,風が直接当たる面で最も大きくなる傾向にあることが明らかになった.また,壁面が平面の場合では,同様の方向の面でも付着する塩分量は一様にならず,分布を持つことが明らかになった.