山田 邦博

三次元地形を考慮した流れ型雪崩の流動シミュレーション

福嶋 祐介

                                
日本は国土の約70パーセントを山林が占めているため、集落や構造物が山岳地帯周辺に密集している地域が多く存在する。それにより、積雪地方の山岳地帯では冬から春先にかけて雪崩が発生し雪崩による遭難・家屋の倒壊などが被害をもたらし時には大勢の死者を出す大惨事に繋がることもある。
これらの現象の被害を未然に防止するためには、その流動特性を把握することが重要である。流れ型雪崩や煙型雪崩の流動シミュレーションにより、その流動範囲や特性を知ることができれば、時期に応じたハザードマップの作成や災害防止施設の設計に反映することができる。
世界の多くの雪崩国では、雪崩そのものの観測と並行して、その運動や到達距離を記述するモデルの開発が試みられてきた。1955年のVoellmyの定式化に始まり数多く存在する。それらを総括すると、

@ 雪崩を「剛体もしくは質点」と仮定する。
A 「連続体」とみなして構成関係(応力―ひずみ関係)を与える。
B 粒子間の衝突による力の伝達と相互変位に着目した「粒状態」モデルを適用する。
以上の3種類に大きく分けることができる。剛体(質点)モデルは比較的単純なため広範に使用されているが、雪崩の実測データをもとに逆算した摩擦係数は測定値に比べ小さい傾向があるといわれる。一方、連続体モデルは方程式系を解く際の構成方程式、境界条件、初期条件の選択が大きな課題である。また粒状体モデルの適用もコンピューター能力の制約などの理由からきわめて単純なケースにとどまっており、まだ実際の雪崩を表現する段階には至っていない。3者とも一応の成果はあげてはいるが、依然普遍的なモデルはなく、雪崩の内部構造、雪の取り込みや堆積等に関連した未知のパラメータが多数含まれているのも実状である。ただ、実際の雪崩のデータが限られている現状では、現存のモデルの有効性、正当性を評価するのも難しい。
本研究では、3次元地形を入力データとし、流れ型雪崩の高さ、速度、濃度、その走路や横方向への広がりも解析することが可能である数値シミュレータを開発した。またこの数値シミュレータと大澤らの煙型雪崩のシミュレーションモデルの解析結果を比較することで、その違いや特徴を明確にすることが出来た。なお本研究で開発した数値シミュレータでは入力地形データとして国土数値情報標準2次メッシュを用いることが可能である。