八戸 剛志

降雪強度を考慮したインバータ制御による消雪パイプシステムの実証試験

福嶋 祐介


 新潟県長岡市は湿潤な雪が降る典型的な豪雪地帯である。このような雪の排除方法として昭和36年頃から消雪パイプが用いられている。地下水が10℃以上と高いことから、降雪との温度差を利用して、道路に散水して雪を融かすものである。消雪パイプは極めて有効な消雪方法であるが、その欠点は地下水を大量に汲み上げて散水するため、冬季後期には地下水位が下がり、消雪パイプそのものが機能しない、地盤条件によっては深刻な地盤沈下が発生することである。従来の消雪パイプは、手動でポンプの運転を行っていたり、降雪検知器と連動させていても、地下水の揚水ポンプをオン・オフするだけで、無駄に地下水を汲み上げていた。このような現状から、地下水節水型消雪パイプの発想が生まれた。すなわち、降雪強度計の出力によって、揚水をインバータ制御することで地下水の汲み上げを最小限とし、消雪パイプの使用する地下水を節約しようとする発想である。

 本研究では、在来型と地下水節水型とを比較し、新システムの有効性の検証をし、実用化への検討を行うことを目的とする。2003年度、2004年度の2冬季の実証試験結果より、従来の降雪検知器による消雪パイプシステムと比較し、揚水量を1/2程度に節水できることがわかった。また、運転時間、電力量も1/2程度に減少していることから省エネルギー効果も高いこともわかった。この試験により、節水型消雪パイプシステムの有効性が明らかになった。しかし、実用化に際して、コストが従来の消雪パイプシステムと比べ高くなるという問題点もある。
そこで、揚水ポンプとその直下流に取り付けられた圧力センサーと非常に多くの流出点を持つ消雪パイプについて、これを管路として取り扱う水理学的検討を行った。圧力センサーによる地下水揚水量の測定法の理論を検討し、その理論から求めた値と実際の超音波流量計で測定された値と比較したところ、かなりの確度で一致した。この理論を節水型消雪パイプシステムに導入し、検証試験を行った。その結果、圧力センサーを用いても流量計によって地下水揚水量を測定した結果と同様の値を得ることができた。これより、高価な超音波流量計の代替品として比較的安価な圧力センサーを使用することができることがわかった。これは、実用化の際の問題点となるコスト対策に十分有効だといえる。