磯部 生

画像処理を利用した路面凍結検知システムの開発に関する研究

鳥居 邦夫

降雪地域において,冬季の交通安全や経済活動の安全を確保することは重要である.また,人々が生活を営む上で,路面状況の情報は不可欠である.そこで現在では,路面の積雪,凍結の状況などを判断し,人々に情報を提供するシステムとして,路面凍結検知システムが開発されている.このシステムは,センサなどの情報収集機器により,路面の状態を判断するために必要なデータを収集する.これをもとに,路面の状態が乾燥しているか,湿潤しているかなどを判断する.次に,外気温,路面温度を測定し,これらと合わせて最終的に路面状況を判断する.そして,得られた判断結果を,ラジオや電光標識を通して人々に情報として提供している.

現在,情報収集器は光ファイバや静電容量センサなどがある.光ファイバのセンシングは線のセンシングであり,それ以外は小領域(80cm2程度)の点のセンシングであり,どちらも路面を網羅した制御情報となっていない.またそれらは,水,氷,雪のそれぞれの判別はできない.さらに路面埋設式のセンサは,摩擦・劣化などの誤作動が生じる.これら検知器精度と信頼性に問題がある.

そのため,本研究では屋内実験や路面凍結現場(長野県大町市)で実験を行い,非接触でかつ広範囲に検出できる方法として,赤外線カメラとCCDカメラを利用した画像処理による路面凍結検知システムの構築に至った.

本研究で構築した路面凍結検知システムは次の通りである.路面が凍結してから溶けるまでの間を2つのSTEPで分けた.STEP@は乾燥路面が雨や雪により湿潤路面になっている場合である.このSTEPでは,赤外線カメラを用いて,路面温度を推定する.ここで5℃以下ならSTEPAに移る.STEPAは,CCDカメラを用いて路面状況(凍結・積雪など)や凍結部分を判別し,それらが溶けてなくなり湿潤路面になるまで観測する.処理方法は背景差分を行い,それより作成された2値化画像のしきい値以上のPIXEL数をカウントし,それを時間微分する.そして背景画像を湿潤路面としたとき,微分の最大値が路面凍結し始め,背景画像を凍結路面としたとき,微分の最小値が湿潤路面になったと判断され,湿潤路面と判断されればSTEP@へ移り,また路面温度を推定する.さらに,PIXEL数をカウントしたデータを成長曲線に適用すると路面凍結を予測することが可能であることがわかった.