平石 哲夫

サーマルマップを用いた凍結危険箇所の予測に関する研究

丸山 暉彦

冬期の路面は,気象条件およびその周辺環境の影響を受け,車両通行に支障をきたす凍結危険箇所が点在している.凍結防止剤の散布は,凍結危険箇所に対して道路管理手法として最も効果的な手法である.しかしながら,各所に設置されている定点観測装置のみでは,1路線に渡って危険箇所を正確に把握することが困難であるため,実作業においては道路管理者とオペレータの経験を基に凍結防止剤の散布タイミングが決定されており,その散布量はかなりの量に及んでいる.また,凍結防止剤には主に塩化ナトリウムや塩化カルシウムが使用されているのだが,その散布に伴い塩害が発生している例もある.中越地区の平成14年度の凍結防止剤総散布量は,約500万kgにものぼり,そのため凍結防止剤の散布量の削減が望まれるところである.
そこで,本研究では走行試験によって得られたデータを基にサーマルマップ(1路線における路面温度分布)の予測モデルを構築し,その精度を検討した.そして,これを用いて1路線に渡っての凍結危険箇所を抽出することにより,各地点における凍結防止剤散布量,タイミングを適正化するシステムを提案した.
走行試験は,新潟県南魚沼郡湯沢町国道17号湯沢維持出張所管内において実施した.このデータと、路線内に設置されている定点観測装置による観測データとをあわせて、サーマルマップ予測モデルを構築した.予測モデルのアルゴリズムには,ニューラルネットワークを用い,過去の経験データに基づいて適切な予測値を導くものとした.また,実際の業務においての利用を考え,予測モデルは走行試験を行わなくても得られるデータのみを入力することで,その2時間後のサーマルマップを出力するものとした.
予測モデルの算出結果より,実際に凍結防止剤散布量,タイミングの適正化を行った.凍結防止剤の有効時間を決定し,それを用いて1路線における凍結防止剤散布箇所を時間推移で表した.また,凍結防止剤散布量,費用についても一例として示した.これらの結果を受け,実際の業務における冬期路面管理手法の検討として,本研究の実用性を示した.
最後に,本研究の冬期路面管理システムの問題点について言及し,今後の課題として実際の業務に用いるための必要事項を示した.