巽 吉生

小型FWDの時系列データを用いた路盤・路床の強度評価に関する一検討


高橋 修

小型FWDは,衝撃荷重を路盤・路床表面に作用させ,その時に発生する荷重と変位から,地盤の強度評価を行う装置である.しかしながら、小型FWDはハードウェアが開発されたばかりで,測定方法,データ処理等に不明な点が多く,また,落下高さやゴムバッファ,載荷板半径が異なれば測定結果が同じにならないと言った欠点も存在している.本研究の目的は,土槽で小型FWDと平板載荷試験を平行して行い試験データを採取した.その後,平板載荷試験で得られた荷重と変位のデータを静的に,小型FWD試験で得られた荷重と変位の時系列データを動的に処理し,解析によって各層の弾性係数を推定した.次に,平板載荷試験の支持力係数と小型FWD試験で得た荷重時間積(荷重発生からピーク値までの波形面積)および変位時間積(変位発生からピーク値までの波形面積) を用いて小型FWDによる新たな地盤強度評価を検討した.
土槽内に路床材としてマサ土,路盤材としてM-40を使用して,様々な強度の地盤を作製し,同じ位置で小型FWD試験と平板載荷試験を行った.小型FWDの載荷板直径は10cm,20cm,30cmの三種類を用いた.重錘落下高さは,10cm〜35cmまで5cm間隔に変え測定した.その後,平板載荷試験の荷重と変位から,ELSA(Elastic Layer System Analysis)を用いて静的解析を行い,路盤・路床の弾性係数を推定した. ELSAは,多層弾性構造体において,層厚,弾性係数,ポアソン比等のパラメータが既知であるとき,多層弾性理論を用いて舗装構造体の挙動を知る事ができる.また,任意点における応力,変位およびひずみの計算が可能である.静的解析の結果から,層厚が薄くなるにつれて弾性係数が大きくなった. 路盤厚さ5cm解析結果は,路盤厚20cmの時より約50倍大きくなった.次に,小型FWDの荷重と変位の時系列データを入力値とし,NASTRANを用いて動的解析を行った. 解析モデルは円筒座標系,軸対称要素を用いて路盤と路床のモデルを作成し,拘束条件は,回転軸は鉛直方向以外拘束,底面は完全拘束,側面は半径拘束拘束とした.荷重は、等分布荷重として路盤の表面に作用させた。 動的解析では,重錘落下高さや層厚が変動しても解析結果に影響はなかった.このことから,動的解析の優位性は疑えない.また,平板載荷試験で求めた支持力係数と小型FWDの荷重および変位時間積との間には,高い相間があった.このことから,小型FWDの荷重および変位の時間積から平板載荷試験の支持力係数を高い精度で推定できる.