大西邦明

アスファルトラバーの粘度特性に関する研究

丸山暉彦

アメリカ合衆国南部のアリゾナ州等の道路舗装に,アスファルトラバー(以下AR)と呼ばれる舗装がある.ARとはアスファルトに自動車やトラックの廃タイヤを微粉砕したゴム粉を混入した道路舗装である.ARの利点は舗装の耐久性が高いこと,廃タイヤのリサイクルができることなどが挙げられる.アメリカでは廃タイヤのリサイクル促進を目的としたARに関する法律が施行されている.リサイクルの必要性が問われている近年,リサイクルできる高機能の舗装であるARを日本にも導入しようとする計画が浮上した.そこでARを日本に導入し実用化するための基礎的な研究が始められた.
ARの特徴は粘度が高いことである.粘度が高くなれば骨材の付着力が上がり,舗装の強度や耐久性を高めることができる.しかしながらARの粘度には未解明な点が多い.ARの粘度はゴム粉の種類,ゴム粉の混合割合や熟成時間等で変化する.そこで本研究ではARバインダーの粘度特性を把握し,最適な粘度となる条件を提案することを目的とし,粘度試験と顕微鏡観察を実施した.またARを実用化するために,ゴムチップ入り開粒度ARの検討も行った.
ARバインダーの粘度特性を把握するために回転粘度計を用いて高温粘度試験を行った.アスファルトとゴム粉の混合状態を確認するために顕微鏡観察も同時に行った.粘度試験の結果によりARの粘度特性の把握ができた.最適な粘度となるゴム粉の混合割合,ゴム粉の種類,熟成時間の提案を行った.
ARバインダーの検討後に,ゴムチップ入り開粒度検討を行った.ゴムチップ入り開粒度ARとは,廃タイヤの加工品であるゴムチップを骨材の1部に混入した排水性舗装型のARであり,従来のARより廃タイヤの混入割合の増加が可能となる.ゴムチップ入り開粒度ARの配合設計を決定するために,マーシャル安定度試験と密度試験を実施した.排水性舗装技術指針のマーシャル安定度の基準値を目標とし,配合設計を行った.密度試験は排水性舗装の排水機能を左右する空隙率を確保するために行った.配合設計を繰り返し行った結果,目標安定度を超える配合を決定することができた.本研究の配合では従来のARと比較して2.5倍以上の廃タイヤを舗装中に混入可能である.廃タイヤの混入量が増えれば,リサイクの面で有利になるだけではなく,舗装の騒音低減なども期待できる.